六章 ②『いきなり襲撃?』
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あたしたちはまず学校の方に歩いていき、途中から東側にそれて住宅街に向かった。町の中心部からは少しはずれているエリアだが、一軒家の建物が多く、ちょっとした高級住宅街になっている。
どの家にも駐車場と庭があり、家の造りも新しい。ちなみに路面もアスファルトに変わる。
「なんかこういう家っていいね」
とマーちゃん。
「うちの教会はスゴい古いからさ、なんかこういうきれいな家にあこがれちゃう」
「あ、わかる。うちの家も古いし、なんか広すぎるから、こういうのって便利そう」
「それにしても、静かだねぇ」
そういえばやけに静かだ。どの家もひっそりと沈みかえっている。通りに出ている人も全くいない。
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「まだ早いからじゃない?土曜だし」
そうは言ってみたものの、やっぱり違和感はある。散歩中の老人とか、ペットの散歩をしている人とか、庭の水まきをしている人とか、そういう人がぜんぜんいない。
どの家も不気味に沈黙している。
その腹に秘密を抱え、静かにあたしたちを見つめている。
「ううん。これ、やっぱり変だよ」
マーちゃんがきっぱりと言った。
「うん。変だよね」
あたしも正直にうなずいた。
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「あ、ここだ」
やがてマーちゃんは一軒の家の前で立ち止まった。
表札には『真崎』と出ている。まだ新しい家だ。
二階建てで屋根は青い。駐車スペースはあるけど車はなく、かなり広い庭がある。庭は半分が花、半分は野菜が植えられている。
まぁ、このあたりでは普通の家だ。
「さてと、まずは……」
と言いかけたとき、いきなり玄関の扉が開き、人影が飛び出してきた!
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「は!」
殺される!
一瞬で全身に汗が噴き出した。どうやって身を守っていいのかわからない。
それから恐怖。そしてあきらめ。だめだ。なにも出来ない。
ただ殺されるだけだ。
いきなりこんなことになるなんて!
人影は両手を開き、飛ぶようにして迫ってくる!
そして、あたしの横をさっとかすめて通り過ぎ……
「おねえちゃん!」
と、マーちゃんに抱きついた。
それは『菜々子ちゃん』だった。おさげ髪の、ちょっと背の高い小学生の女の子。
「ふぅ……」
なんか緊張しすぎたみたい。
すでに汗びっしょりだし、気づいたらロザリオをギュッと握りしめていた。
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「おはよう、ナナちゃん」
とマーちゃん。
「おはよう。ほんとに来てくれたんだね」
「だって約束したでしょ?」
「でも、ほんとに来てくれると思わなかったの」
それからナナちゃんはくるりとあたしの方をみた。
「あれ?シンちゃんのお姉ちゃん」
「おはよう、ナナちゃん。あたしね、マーちゃんの友達なの」
「そっかぁ、おねえちゃんも来てくれたんだね。ありがと」
ナナちゃんはペコリと頭を下げた。
「で、お母さんは相変わらず?」
マーちゃんが聞くと、ナナちゃんの顔が急に寂しそうになった。
「今も部屋に閉じこもってる」
「わかったわ。さっそく行きましょう」
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