第7話
第五章 決戦
一
三回戦は、時折、小雨が降る悪天気の中、開始された。
雨に加えて、さらに気温が低くて肌寒い。サバイバルゲームを行うには、あまり適した状況とは言えない。
今回もフィールドは森ステージである。
前回に比べると、教室の裏手に広がる森に加えて、ゴルフ場一帯もエリアになっており、その広さは二倍くらいに広がっている。
フィールドの南には湖が広がり、そこに面しているところは草むらで開けている。一方で北側は小高い丘になっており、湖と丘の間のフィールドは起伏が大きくなっていた。
天気のせいもあり、森の中に入るとかなり見通しが悪い。
「そっちはだめです。下手すると包囲されます。右側に行きましょう」
三ノ宮さんの声に従い、先頭の唯香は黙って森の歩道を右に進路を変える。俺たち残りの三人もそれに従う。
ゲームが始まってすでに一時間が経過していた。相変わらず、雨は降ったりやんだりを繰り返している。
俺たちはまだだれもやられていないが、一人の敵も倒していなかった。
決勝戦の制限時間は三時間と前回までよりも長い。俺たちは森の中を歩き回ったが、何の成果も上げられず、焦りと疲れが俺たちを包んでいた。先ほどから周りからは銃声らしき音は聞こえてこなかった。どこかで戦闘が発生すれば音でわかるはずだが、それらしい気配はなかった。
最大の敵は、阿暦サンドラ。それは俺たちはもちろん、残りの二チームにも共通した思いだろう。サンドラと戦う前にそれ以外のチームを倒そうと、俺たちは敵の姿を探していた。しかし、敵もここまで勝ち残っただけあって、動きは慎重だ。遠くに姿が見えて近づこうとしても、敵もすぐに気が付き、長短の射程の武器を使い、味方の援護を受けながら後退していくので、なかなか本格的な戦闘にならなかった。
そうかと思うと、遠くから狙撃されて、あやうくやられそうになったりするなど、気が抜けなかった。
俺たちがまだ一人もやられていないのは、三ノ宮さんの指示により、なるべく有利な地形を選んで進んでいたことが大きいだろう。そうこうしている間に時間が経っていく。ほかのチームも同じように焦りを感じているのだろうか。
俺たちは森の奥の少し開けた場所に辿り着いた。そこで唯香が立ち止まった。
「ちょっと休憩にしましょう」
その声を受けて、俺たちは木と木の間に張られた大きな暗幕の下に座り込んだ。
ずっと走っているわけではないので、体力的にはそんなに消耗しているわけではないが、いつ敵に遭遇するかという緊張感から精神的に疲弊していた。
「ふう~」
木の下に座り込むと、俺は思わず声を上げた。その場所は、木の枝と暗幕に遮られていて、あまり雨も降り注いでこない。
そんな俺の前に板チョコレートが差し出された。唯香からだった。
「今のうちに食べておきなさい。戦闘が始まるとそれどころじゃなくなるから」
「こんなの持ってきていたのか」
俺はチョコを受け取ると二かけらほど割り、口の中に放り込んだ。チョコの甘さが口の中いっぱいに広がっていった。さらに唯香は中村と三ノ宮さんにも同じように渡していた。
「準備がいいな」
「当たり前でしょ。決勝は時間が長いから食べ物や飲み物を持ってくるのは当然。ほかにもスポーツドリンクやバナナもあるわよ。いる?」
唯香のリュックが膨らんでいると思ったら、そんなものを持ってきていたのか。
「いや、とりあえずこのチョコレートだけで十分だ。サンキュー」
腹は減っていなかったが、少し気分が落ち着いたような気がする。
その時、一発の銃声が鳴り響いた。俺たちに緊張が走る。銃声の響いた方を見たが、姿は見えない。銃声の大きさからして至近ではないが、それほど遠くもなさそうだ。続いて、数発の発射音が聞こえた。こっちはマシンガンによるものか。
近くで戦闘が発生しているらしい。
「どうする唯香?」
唯香はしばらく考えている様子だったが、三ノ宮さんの方を向いた。
「三ノ宮さん。今の位置分かる?」
「ええ、大体は。ここら辺で戦闘になりそうなところは頭に入っていますので、敵との遭遇を回避しながら近づくことも可能かと思います」
「分かった。じゃあ、みんな行くわよ。周囲に気を付けて」
短い休憩は終わった。俺たちは立ち上げると、また、武器を構えて歩き出した。
三回戦については、三ノ宮さんがライフル、唯香と中村がショットガン、俺がマシンガンを装備している。
森は大きな木が密集していて、しかもあちこちに暗幕が設置されていて、かなり視界が悪い。気を付けないといきなり至近で敵と遭遇という事態になる。
俺たちは密集隊形を取りながら、周囲に注意を払いながら、銃声のした方向に向かっていった。その間も散発的に銃声が響く。それも一方向ではない。前方から聞こえたかと思うと、次は横から。ショットガンだったりマシンガンだったりと様々だ。音が反響していて、今一つ位置がつかめない。
唯香が歩みを止め、周囲の様子をうかがっている。珍しく判断を迷っているらしい。
「敵が見えない以上、下手に動かないで守りに徹した方がいいんじゃないか」
俺の言葉に真っ先に賛同したのは三ノ宮さんだった。
「私もそう思います。動いて体力を消耗するよりはとどまって体力を温存した方が、来る決戦に向けていいと思います」
来る決戦。それはもちろんサンドラのチームとの戦いだ。その言葉は唯香を刺激した。
「分かったわ。そうしましょう。それで、それに適した場所は分かっているのよね」
唯香の言葉に三ノ宮さんは笑顔で返した。
「もちろんですわ」
俺たちは三ノ宮さんの指示の下、場所を移動しようとしたその時だった。
背後から物音がした。振り返ってみると、敵が複数こちらに向かってきていた。男三人と女一人。サンドラのチームではないようだ。
「散開し、それぞれ標的を狙って」
唯香の指示に従い、俺たちは近くにあった木の影に身を隠した。
敵はライフルが二人、あとはショットガンとマシンガンのようだ。この辺りは太い木々が高密度で生い茂っていて遠距離射撃には向かない。比較的射程の短い武器の 多いこちらの方が多少は有利か。
相手チームもこちらの武装は当然すぐに把握したことだろう。木の陰に隠れながらこちらに銃撃を加えてくる。俺も相手に狙いを定めるが、俺の持っているマシンガンで届く距離ではなかった。もし敵が突撃してきたら連射で確実に仕留める、それがこの場における俺の役割だろう。
俺から三メートルほど離れたところでは、唯香がショットガンを構えている。さらに少し離れたところで中村がショットガンで撃ちあいをしている。三ノ宮さんの姿はここからでは見えない。俺も木の影に隠れながら相手に向かって威嚇の銃撃を行う。
だが、こちらが銃口を向けると相手は木に隠れるのでらちが明かない。電子銃には弾切れはないので、時間が許す限りこの撃ちあいはいつまでも続く。
「唯香。どうする。このままではらちが明かないぞ」
「分かっているわよ。今、考えている」
あるいはこうした状況では先にしびれを切らした方が負けなのか。だが、こうしている間にも別のチームが動いているだろう。こちらの背後から狙われたらアウトだし、逆に向こうにいる敵チームの背後を狙ってくれたらありがたいのだが。
俺はそう考えながら背後を見ると、木の間に動くものが視界に入った。まだ、かなり距離はあるが別のチームが接近しているようだ。
「唯香、まずいぞ。背後に別のチームが来ている」
「本当? 周囲の状況をよく見てみて。横や後ろにもいるか、できるだけ詳細に」
「分かった」
俺はまた周囲を伺ってみた。横には姿は見えない。後ろには、視認できる範囲では二人か。先ほどから位置を変えた様子はない。こちらの出方次第で来るということか。
「敵は後ろに二人。その場にとどまっている。他に姿は見えない。あまり状況はよくなさそうだ。下手したら挟み撃ちにあう」
「分かった。じゃあ、この場は一時撤退する。右斜め後方に下がりましょう。うまくいけば、前方の敵と背後の敵がつぶし合ってくれるわ。中村君と三ノ宮さんにもそれを伝えて」
「了解」
確かにこのまま膠着状態を続けているよりはましな選択と思えた。
雨は本降りになってきた。
大粒の雨が周囲に木々に辺り、細かく霧状に周囲に立ち込める。木々で覆われているおかげで、それほど直接的に雨に打たれることこそなかったが、肌寒さが加わり、俺たちの体力と気力を確実に奪っていった。
俺と唯香は木の下に座りこみ、雨宿りをしていた。お互いに無言だ。
もうゲームが開始してから二時間が経とうとしているが、その間に俺たちが倒した敵はゼロ。移動している間に中村とも三ノ宮さんともはぐれてしまった。
厚い雲が天を覆っている。
森の中はただでさえ光が届きにくく、陰鬱な情景が俺たちの気持ちをさらに暗くする。この間に、何度か敵と遭遇し戦闘になった。俺たちはそのたびに走り回り、敵と遭遇しない時も常に周囲に気を払い、肉体的にも精神的にも消耗しきっていた。
「はい」
俺の前に差し出されたのはバナナだった。
「糖分の補給は大切。元野球部なんだからそれくらい知っているでしょ」
「ああ。すまない」
「ごみは回収するから、そこら辺に捨てたりしないでね」
こんな時にそんなことまで気が回るのかと少し感心した。俺はバナナを食べながら唯香に言った。
「なあ、唯香。この際だから、今度敵と遭遇したら、全力でそいつを倒してポイントを稼がないか。うまくいけばそれで貴族階級になれるかもしれないし」
「だめよ。貴族階級じゃ。サンドラを倒して王にならないと」
それは何度か聞かされた言葉だったが、さすがに唯香も相当疲れているのだろう、いつもより言葉に力がなかった。だが、俺も疲れているせいもあって、いつもなら聞き流す唯香の言葉に少しいら立ちを感じた。
「わかった。じゃあ、唯香は勝手にやってくれ。このままじゃらちが明かないから、俺はフィールドの真ん中にでも突っ込んで、手近な敵にぶつかってくるから」
「ちょっと、何言っているの直人」
唯香は俺を睨み付けた。
「何だよ。大体、なんでお前そんなに王にこだわるんだ。制服も貴族だって十分かわいいだろう。それに王になれたって、それを維持するにはこれからもゲームに勝ち続けなければならない。そんなの無理だろう」
俺の言葉に、唯香は俺を見て悲しげな表情を浮かべた。だが、それは一瞬で、その表情は無表情に変わった。唯香とは長い付き合いなので感情の起伏もよく心得ている。こいつが無表情になるときは、相当怒っているときだ。
「もう、いい。分かったわ」
唯香は立ち上がった。
「私一人でやるから」
「おい、待てよ…」
だが、その瞬間、唯香の目が遠くをさまよった。
「敵か?」
「そう。向こうから二人、こっちに向かっている。こちらには気が付いていないと思う」
「よし、逃げてばかりは疲れた。その二人を倒そう。いいな」
「分かったわ」
珍しく唯香は俺の提案に従った。
俺たちは大木の影に隠れた。二人隠れるとぎりぎりなので、俺と唯香はぴったりとくっつく形になった。
足音が近づいてくる。一歩二歩。
聞こえてくる歩幅を数えながら、敵がすぐ近くまで来たと判断したとき、俺たちはいっせいに飛び出した。だが、その先に敵はいなかった。
「えっ」
飛び出した俺に対して、離れたところから銃口が向けられた。どうやら相手に気づかれていたようだ。
俺はすぐに近くの木に横っ飛びする。銃声があとから聞こえた。アラームはならない。かろうじて銃弾は交わしたようだ。だが、前方に敵がもう一人が現れる。その手にはショットガンが握られており、銃口は唯香に向けられていた。唯香はその場で凍りついたようになっていた。
「この野郎」
俺はめちゃくちゃに周囲に向かってマシンガンを放った。ちゃんと狙いを定めていなかったために、当たらなかったが、敵はその勢いに少し怯んだ。
「いくぞ」
俺は唯香の手を握り、マシンガンを背後に向けて乱射しながら、森の中を駆け抜けた。
何分走っただろうか。俺たちは森の端を走っていた。
右には五メートルくらいの崖があり、その下には湖がある。森の中とは違い多少光も差し込んでくる。雨脚も少し弱まったようで、霧状の雨が天から降り注いでいた。
俺も唯香も息が荒い。とりあえず背後から敵が追ってくる気配はなかった。
「撒いたみたいだな」
「……」
唯香の反応がない。
「おい、唯香。寝ているのか」
唯香の方を見ると、その目は虚ろで、視線が定まらない様子だった。体がふらふらしている。そして、唯香の体がよろけた。湖の方に。
俺はあわてて手を伸ばし、唯香の体を支えようとした。しかし、唯香の片足が空をさまよい、そのまま下に転げそうになる。俺は手を伸ばし、何とか唯香の左手を掴む。
「唯香。右手を伸ばせ」
唯香も我に返ったのか、俺の方を見た。
「直人。無理しないでいいよ。そういうキャラ似合わないし」
「少しは恰好つけさせてくれ」
俺は手に力を込め、一気に唯香を引き上げようとした。だが、雨が降って地面が緩んでいたのだろう。踏ん張ろうとした俺の足元が崩れた。唯香もろとも俺は下に転落した。
(まったく恰好つかないな)
俺は唯香の体を引き寄せると、せめて、その体を守ろうと唯香の頭を抱え込んだ。そのすぐ後、背中に強い衝撃が走った。そして、俺の視界は真っ黒になった―
そこは、いつもの教室だった。
帰りの会が終わると、俺はランドセルに筆記用具、教科書、ノートをしまい、帰ろうとしていた。だが、それを遮るように、目の前に赤いランドセルを背負い、黄色い帽子をかぶった唯香が立っていた。
「直人。行くよ」
「行くってどこへ?」
「高校の文化祭に決まっているじゃない」
「は?」
それは、何の脈絡もない唯香の提案だった。
きっかけはささいなことのようだ。
唯香の友達の姉がある高校に通っている。その友達は姉の高校の文化祭に行って、その華やかな様子に感動し、それをクラスの女子たちに熱く語った。その話を聞いた唯香を含む女子たちはみなうらやましがったが、唯香が他の女子と違ったのはその行動力であり、授業が終わるとすぐに俺に声をかけた。
「その高校ってどこにあるの?」
「ここから電車で三つ目。そんなに遠くないから、すぐに行くわよ」
「すぐにって、今からかよ」
「そう。今日が最終日で夕方には終わるみたいだから、今から」
唯香の性格はこのころから同じだ。我がままで自分勝手で…。
当時、小学四年生の俺たちにとって、自分たちだけで電車に乗るのは勇気のいることだった。それでも唯香は普通に切符を買い、改札を通った。俺もそれに倣う。
駅から高校までは距離があった。通常なら歩いて一五分くらいの距離だが、子供の足ということもあり、迷いながらということもあり、たどり着くまで一時間くらいかかった。
高校に辿り着いたときには、辺りは薄暗くなっていた。
高校には華やかな装飾がされ、門の前には大文字高校文化祭という大きな看板があった。だけど少し時間が遅かったらしい。食べ物を売っていたであろう店は軒並み片づけを開始していて、何かのイベントを行っていたであろう仮設のステージには誰もいなかった。
「もう、終わりみたいだな」
俺の声に唯香はうつむいたまま何も言わなかった。
俺たちは並んで少し校内を歩いた。しかし、どこも同じような様子だ。時々すれ違う高校生が俺たちに奇異な視線を向ける。その間も唯香は無言だった。
しばらく歩いていると、校庭くらいの大きさの屋根で覆われた広場があり、そこに 高校生たちが集まっていた。
「唯香、あそこに人が集まっている。何かやっているかもしれない」
唯香は何も言わず、ただ小さくうなずいた。
近づいてみると、十人位の高校生が集まっていた。しかし、何かの話し合いをしているようで、イベントとかそういうのではないようだ。
「何も、ないみたいだな」
唯香は相変わらずうつむいたままだった。
「もう帰ろうか」
唯香は黙ったままで、その顔は今にも泣きだしそうだった。
「君たちどうしたの?」
急に声をかけられた。俺たちの目の前には、髪の長いきれいな女子高生が、心配そうな顔で俺たちを見ていた。その容姿もそうだが、さらにその身にまとっていたちょっとしたドレスのような服が目を引いた。
俺は唯香の方を見たが、唯香は話し出せそうになかったので俺が状況を説明した。
「それはごめんね。せっかく来てくれたのに」
その人が謝るようなことじゃないということは子供ながらにも分かった。
きれいな人は少し考えたような表情を浮かべていたが、すぐにまた笑顔に戻った。
「このあと、ダンスパーティーがあるんだけど、君たちも見ていかないかな。本当は生徒だけのイベントなんだけど、特別にね」
「えっ、いいんですか」
「うん。でも、遅くなると家の人が心配すると思うから、なるべく早く帰るんだよ」
「分かりました」
答えた俺の横で、唯香は顔を上げていた。まだ笑顔には至らないが、その顔はいつもの晴れやかな輝きが垣間見られた。
それから三十分ほど経った。辺りはすっかり暗くなっていた。
いつの間にか広場には多くの高校生が集まっていた。広場の奥側には、ギターやキーボードなど、楽器を携えた生徒たちがスタンバイをしていた。
まず、バイオリンが静かに奏でられた。やがて、ギターやキーボードの音も加わり音楽は次第に盛り上がりを見せる。それに合わせて広場では高校生たちが踊り始めた。多くの高校生が男女のペアになっている。
色とりどりのスポットライトが広場と踊っている高校生たちを照らした。スポットライトは楽器の奏でる曲想に合わせて様々にその色を変えていった。
やがていったん音楽が途絶えた。すると、広場にいた高校生たちは周囲に下がり、次に華やかな制服を着た一組の男女のペアが現れた。
「王と女王だ」
周りで誰かがそう言った。
ペアの一人は、先ほど俺たちに話しかけてくれたきれいな人だった。男の方も背が高くかっこいい服を着ていた。
二人が広場の中央に進むと、また、音楽が再開した。そしてそれに合わせるように二人は踊り始めた。
俺の目はそのきれいな人から離れなかった。
まるでその人を彩るために作られたような制服を身にまとい、アップテンポな音楽に合わせて、光の中で美しくダンスを踊っていた。
周りの高校生たちもその姿に引き付けられていた。まるでどこかの国の王子様とお姫様のようだった。
唯香も当然のごとく、その光景に見とれていた。
そのきれいな人は俺たちの近くに来たとき、笑顔を浮かべて小さく手を振ってくれた。
俺はその光景に見とれていた。そして音楽が鳴りやむと、盛大な拍手の中、そのきれいな人たちは下がって行った。その間も、俺はしばらくぼーっとしていた。
「すごい、きれいな人だな。まるでお姫様みたいだ」
俺はつぶやいた。
だが、隣の唯香からの反応はなかった。俺が唯香の方に目を向けると、唯香は俺の方をじっと見ていた。
「な、なんだよ」
「別に。うん、とてもきれいな人だったね」
俺たちの小さな冒険はそれで終わった。家に帰ると、帰りが遅かったことを親に怒られた。
「ねえ、直人。目を覚ましてよ」
唯香の声が間近から聞こえた。
目を開けると唯香の顔がアップで迫っていた。その基本的なパーツはあまり子供の頃とは変わっていない。だけど、あのころよりも少し大人びた容姿。唯香は心配そうな表情を浮かべて、じっと俺のことを見ていた。
俺の意識はまだ半分、夢の中を彷徨っていた。
「きれいになったな」
「え?」
言葉を放つと俺の意識は急に現実に戻った。
「あっ、いや、紅葉の話だ。木々がきれいに色づいたなと思って」
「何よ、驚かせないでよ」
俺はあたりを見回した。そこは湖の畔だった。上を見てみると、さっき俺たちが落ちた崖がある。
「あそこから落ちたのか」
「そうよ。あなたが目を覚まさなくて心配したんだから」
唯香はそう言いながら立ち上がろうとした。
「くっ」
唯香は苦痛に顔をしかめ、また、座り込んでしまった。
「お前、けがしたのか」
「大丈夫よ。これくらい」
そう言いながら唯香は立ち上がろうとした。今度は立ち上がれたが、明らかにその立ち姿はぎこちない。
「このままじゃやばい。もう中止しよう」
「中止なんて絶対だめよ」
唯香は歩き出そうとした。右足を引きずるように歩く姿が痛々しい。俺はそんな唯香の肩を掴んだ。
「もうやめろ。いいか、棄権する」
俺は強い口調で唯香に言った。だが、それに対する唯香の反応はそれ以上に強いものだった。
「絶対だめ。棄権なんてしたら、あなたを許さないんだから」
「お前、何でそんなに。ここまでの成績で貴族はほぼ確定だろう。それでいいじゃないか」
「だから貴族じゃ意味ないのよ」
唯香はまた歩き出そうとする。だが、片足を引きずっているので速度は極めて遅い。時折見せる苦痛にゆがむ顔が痛々しい。
俺はそんな唯香の姿を見ながら覚悟を決めた。
「唯香。棄権しないんだな。あくまで一番を目指すんだな」
「そうよ。何度も言っているじゃない」
「分かった。お前がその覚悟なら、俺もそうする」
俺は唯香の前に行くと、屈んだ。
「唯香、乗れ」
唯香は一瞬何のことだか分からなかったようだが、すぐにその意味に気が付くと顔を真っ赤にした。
「そんなこと、恥ずかしくてできるわけないじゃない」
「お前、そんなこと言っていられる状況だと思っているのか。このままじゃすぐに敵に見つかる。満足に歩けないお前は敵にとっては格好の的だ。とにかく早くここからもっと安全なところに行かないとやられるだけだぞ」
唯香は少しうつむくと、黙ってうなづいた。そして、俺の背中に乗ってきた。
俺はそのまま立ち上がった。唯香の体はとても軽かった。
「少し走るからしっかり掴まっていろよ」
「うん」
唯香は小さく答えた。
俺は唯香を背負ったまま小走りを始めた。背中に柔らかい感触を感じる。唯香の息は荒く、首に温かい息がかかる。
「直人。背中、大きくなったね」
この状況にその言葉は反則だろう。
「舌をかんでもしらないぞ」
これ以上の会話は、俺の方が恥ずかしくて耐えられそうになかった。
俺たちは湖畔を走り、坂を駆け上がり、少し開けた場所にたどり着いた。
そこは、ゴルフ場のグリーン付近だった。グリーンの周りには二つの砂場(バンカー)があり、その周りを草地(ラフ)が囲んでいる。グリーンを挟んで向こう側が森だ。
「直人。前」
身を隠せる森まであと少しのところであったが、そう甘くなかったようだ。ライフルを構えた生徒が二人、こちらに近づいてきた。
男女の生徒。両方とも見覚えがある。昨日、サンドラの後ろにいたC組の貴族様だ。いよいよ本命のお出ましか。
俺は近くの砂場に潜り込み、そこで背中の唯香を下した。
そのバンカーは深く、屈めば全身隠れることができる。だが、もう姿は見られているため、そのままやり過ごすことはできない。
こちらの手持は唯香のショットガンと俺のマシンガン。バンカーの手前側はほぼ垂直になっていて、身を隠すのにちょうどよかったが、後ろ側はゆるい坂になっていて、敵に回り込まれて遠距離から狙われたらそれで終わりだ。
「こんなところで終わるなんて…」
珍しく唯香が弱気を口にした。
「まだ、終わりじゃないだろう。あきらめるなんてお前らしくないぞ」
その言葉を聞いた唯香は、いつもの強い視線で俺を見て、軽く挑むような表情に笑顔を浮かべた。
「あきらめるなんて一言も言ってないわよ」
敵は左と右、二手に分かれて、大きく回り込むようにして近づいてきている。こちらの有効射程距離は分かっているようで決して近くには寄ってこない。
「近寄らないのなら、こっちが行くまでだ。一気に相手との距離を詰める。唯香は援護してくれ」
「分かったわ。直人に任せる。くれぐれも足元には気を付けてね」
俺は少し助走をつけて、砂場の横から飛び出した。そして、マシンガンを手に、右から回り込んでいた男子生徒に目がけて突っ込んだ。
相手は一瞬、驚いたような表情を浮かべたが、すぐに状況に対応し、こちらを捉えようとした。
相手のライフルの銃口がこちらに向けられる。だが、俺はなるべく体勢を低くして、左右に動き相手の標準が定まらないようにした。
俺の後ろでは、唯香が砂場に身を隠しながら、ショットガンでもう一人の女子生徒に撃ちかけていた。
相手は俺にライフルの標準を定めて引き金を引いた。俺はその瞬間、滑り込むように身を低くした。
銃声が響いた。だが、アラームは鳴らない。これで相手はしばらく銃を撃てない。
俺はすぐに身を起こすと、まっすぐに突撃し、マシンガンを左右に振るようにして、至近から連射した。
相手のアラームが鳴り響いた。よし。ひとり倒した。
「直人。後ろ!」
唯香の叫ぶ声が聞こえた。
俺の横からライフルを構えた敵の女子が迫っていた。距離にして二十メートル。ライフルの射程圏内だ。
俺は慌てて相手の方を向こうとするが、相手の銃口は俺の身体を捉えていた。
万事窮す、そう思った。
だが……、
別の方向から銃声が響いた。
見ると、目の前の女子が信じられないという表情を浮かべて立ち尽くしていた。その身につけたアラームが鳴っている。
俺は銃声が響いた方を見た。もう一つの砂場。その手前には、ショットガンを構えた男が立っていた。
それは中村の姿だった。全身砂まみれだ。
「中村!」
「やったぜ。どうだい貴族様よ」
中村は会心のドヤ顔を浮かべていた。
「隠れていたのか」
「ああ。この前の作戦と同じだ。みんなとはぐれた後、今度は砂場の中に隠れていた。今日は雨が降っていたので、砂ののりもよかったぜ」
中村は笑顔を浮かべて俺の方に駆け寄ってきた。雨の中でずっと砂場の中で耐えてきたかと思うと心底頭が下がる。
「三ノ宮さんも俺の勇姿に惚れるだろう」
いや、やっぱり前言撤回する。
俺はほっとして周囲を見回した。
その時だった。
中村の後ろに新たな人影が見えた。そして、その手にはショットガンが握られていた。
「中村、気をつけろ」
俺の声とほぼ同時だった。
周囲に銃声が響いた。そして、今度は中村のアラームが鳴った。
「馬鹿な。ぐふっ」
中村は、その必要もないのだが、胸を押さえてその場に倒れこんだ。
中村の背後には、ショットガンを持った長い髪の女が立っていた。
それは、ご自慢の金髪をなびかせた見間違えようもない女王。サンドラ、その人だった。俺たちと同様に全身ずぶ濡れであるが、相変わらず悠然としたものである。
「みんなやられちゃったみたいね」
サンドラは周囲を見回しながらそう言った。ハリウッド女優のような端正な顔に、笑みを浮かべていた。そしてそのロイヤルブルーの瞳に俺を捉えながら、涼やかな声で言った。
「あなたとは昨日、お会いしましたね。お名前を伺っていいかしら」
「城島直人」
俺は短く答えた。するとサンドラは満足そうにうなずいた。
「それじゃあ、城島くん。このゲームを制するのはどっちか、勝負しましょう」
「分かった」
俺はマシンガンを構えた。
サンドラと俺との距離は、今は約三十メートル。
射程は相手のショットガンの方が上。中距離から狙われたらひとたまりもない。ここはゴルフ場のコースの真ん中であり、身を隠せる場所は限られている。だが、遮蔽物の多い森まで行けば、こちらにも勝算がある。
俺がそんな考えを巡らせたのはわずかな間だったが、その時間をサンドラが見逃してくれるわけもなかった。
サンドラがこっちに向かって走り出した。
速い。
俺はあわてて回れ右すると、反対側に向かって走り出した。
雨で濡れたゴルフ場の短い草に足を取られそうになるのに気を付けながら、全力で走る。
だが、サンドラの足は速い。
俺が全力で走っているのにも関わらず、その距離は少しずつ縮まっていった。
こちらは長く続いた戦闘で体力がすっかり尽きていたことに加え、最近の運動不足ということもあるだろう。だが、それでも俺の足は並みの男子よりも速いはずだ。それよりも速いなんて。あいつ本当に女か?
サンドラに消耗した様子はない。俺と同様に、長い時間戦って来ているはずだが。さすが女王といったところか。
このまま走って森に逃げ込みたいが、相手の足が速くそこまでもちそうにない。ここは一か八か接近戦に持ち込むしかない。
俺はその場で突然振り向いて、一気にサンドラに接近しようとした。
そのとき、俺を追いかけてきたはずのサンドラの姿が突然、視界から消えた。
「何?」
いや、消えたわけではなかった。
サンドラは前のめりに倒れている。どうやら転んだようだ。勢いよく走っていて豪快に転んだためか、ショットガンが離れたところに落ちてある。
「なんで、私が、こんな無様な」
放心しているサンドラを横目にしながら、俺はサンドラの近くに転がっているショットガンに向かって走った。
サンドラもそれに気が付いたらしく、あわてて起き上がり、ショットガンを目指す。しかし、その反応は少しばかり遅かった。
俺はヘッドスライディングで滑り込み、タッチの差でショットガンを手にした。
そしてすぐにマシンガンをサンドラに向けた。
サンドラの動きは止まった。
「あなたこれはルール違反よ」
サンドラは満面の怒りを示しながら、俺に向かって言った。
「何がルール違反だ。相手の武器を使うのは反則だが、相手の武器を奪っていけないとはなっていないはずだ」
「そのことじゃないわよ」
そう言うとサンドラは手に持ったそれを掲げた。それは見覚えのある黄色い有機物。バナナの皮だった。
「こんなものを仕掛けるなんて反則じゃない。しかも、よく見たらあちこちに置かれてある。外から道具類を持ち込むのはルール違反よ」
「バナナの皮?」
俺は何のことかよくわからなかった。確かに草地をよく見てみると、ところどころ黄色いものが置かれてある。
俺は軽く首をかしげた。すると、後ろから笑い声が聞こえた。それは唯香の声だった。
唯香はショットガンを片手にバンカーから出ていて、少し足を引きずりながら、こちらの方に近づいてきた。
「いいえ、ルール違反じゃないわ。確かに物を持ち込むのは禁止されているけど、食べ物はOKのはずよ。私は食べ物としてバナナを持ち込んで、それを周りに捨てた。それだけよ。マナーとしてはよくないかもしれないけど、ルールには違反していないわ」
「くっ!」
サンドラの端正な顔がゆがんだ。
確かに唯香の言っていることは正論だし、それに何より、プライドの高い女王である自分が、こんなチャップリンの時代からある博物館級の古典的なギャグのようなわなに引っかかったのが許せないのだろう。
「唯香、お前狙ってやったのか」
「当たり前じゃないの。私がただ座って待っていただけだと思うの。あなたが戦っている間に、目立たないように周りに投げておいたのよ」
さすが唯香。相変わらずやることがあざとい。だが、絶好のチャンスだ。
「唯香。サンドラを倒せ。そうすればお前が女王だ」
「女王。私が…」
唯香は手にしたショットガンを構え、ゆっくりとサンドラに近づいていく。
あと十歩でサンドラが射程距離に入る。
その時だった。
俺の視界の端に、森の方から現れた新たな人影を捉えた。
俺は慌てて握っていたマシンガンをそっちの方に向けた。だが、その顔を見ると、緊張が解けた。
森から、笑顔を浮かべて手を振って出てきたのは三ノ宮さんだった。
「三ノ宮さん無事だったんですね」
「はい。皆さんとはぐれてから、茂みの奥に隠れていました。城島さんと赤坂さん、お二人とも無事で何よりです」
だが、三ノ宮さんはサンドラを見ると、その表情からは笑顔が消えた。手にしたライフルを構えた。
「大丈夫。サンドラの武器なら俺が持っているし」
俺は左手に持ったサンドラのショットガンを掲げた。
だが、三ノ宮さんはライフルを下さない。その目はサンドラの方をじっと見つめたままである。
「えっと、申し訳ないが、ここは唯香に譲ってあげたいと思っているんだけど…」
俺が途中まで言ったところだった。
三ノ宮さんの表情がかすかに動いた。普段、にこやかな三ノ宮さんからは考えられない何か痛みをこらえるような表情。
そして構えていたライフルの銃口が動き、銃声が響いた。
アラーム音が鳴り響いた。
「えっ?」
その声の主は唯香だった。
アラームの音は、唯香から響いていた。
唯香は何があったのかわからず、呆然としていた。それは俺も同様だった。
「三ノ宮さん。どうして?」
俺が気を取られた瞬間だった。サンドラが素早く俺に近寄り、俺の手からショットガンを奪い取った。
俺はすぐに我に返り、マシンガンを発射しようとしたが、そのときにはサンドラは射程の範囲外に走り去っていた。
サンドラは振り返ると三ノ宮さんに向かって言った。
「三ノ宮さん。あなたがA組のチームに入ったと聞いたときは、てっきり私たちの元を離れるということかと思いましたが、こういうことだったのですね」
サンドラは笑顔を浮かべていたが、その笑顔には幾分、嘲りの色が浮かんでいた。一方で、三ノ宮さんの表情は厳しいものだった。
「いえ、違います。女王。他の人にはあなたを倒させない。あなたを倒すのはこの私です」
その言葉を聞いたサンドラは相変わらずの笑みを浮かべていたが、その笑顔の性質が少し変わった。
「なるほど、そういうことね。分かったわ。あなたがその覚悟なら、私も迎え撃つわ」
サンドラはそう言うと、武器を構えながら、素早く走り、距離を取った。
三ノ宮さんはサンドラに向かってライフルの標準を合わせる。
俺はそんな二人を放っておいて、唯香に駆け寄った。
「大丈夫か。唯香」
だが、唯香は割とケロリとした顔をしていた。
「ああ、やられちゃった。けがまでしたのにこういう終わり方ってないよね」
唯香は少し目を逸らしながら言った。
「唯香はよくやった。よくがんばったよ。お前は」
俺はそう言って、唯香の頭を撫でた。唯香はそんな俺の手を視線で追った。そして、その表情がみるみる曇っていった。
「でも、本当のこと言うと悔しいよ。本当にもう少しで手が届くところだったのに。やっとここまできたのに…」
そう言うと、唯香の頬を大粒の涙が伝った。
唯香が泣くのをみるのはいつ以来だろう。
中学の頃、野球の全国大会のとき、俺たちの応援に来ていた唯香は、試合が進み点差が開いて、応援団も意気消沈していたときでも、最後まで声を枯らしながら俺たちに声援を送り続けた。
試合が終わり、俺たちが悔しい気持ちを通り越して頭が白いまま球場を出るときも、唯香は俺たちを元気づけようと精一杯、声をかけてくれた。だが、そのすぐ後、声を上げて泣き始めた。「みんなあんなに頑張ったのに…」そう言いながら、唯香はいつまでも泣き続け、逆に俺たちが唯香を元気づけようとしたくらいだった。
俺は唯香をそっと抱きしめた。
少し離れたところからアラームの音が聞こえた。見ると、サンドラのショットガンが三ノ宮さんの胸を捉えたところだった。
二人の声が聞こえる。
「女王。私はあなたに勝ちたかった。前回は同じチームだったのに、今回はチームから外されて。あなたを信頼していたのに。あなたの傍がよかったのに……」
「三ノ宮さん。私はあなたを過小評価していたみたいね。てっきりただのお利口なお嬢さんだと思っていたけど、こんなに勝つことに執着するなんて。あなたをチームから外したのは、私の判断ミスだったみたいね。次のゲームではまた、一緒に戦いましょう」
「女王」
三ノ宮さんは涙を流してサンドラに抱きつき、サンドラはそんな三ノ宮さんを受け入れた。だが、俺にとってはそんな女の友情なんてどうでもよかった。
俺は唯香が泣くところを見たくはなかった。
子供の頃からいつも唯香と一緒だった。小さいころから、唯香は喜怒哀楽が激しく、うれしいときには素直に笑い、悲しいときにはすぐ泣く女の子だった。さすがに成長してからは、幾分感情を抑えるようになったが、今でも、我がままで、自分勝手で。それでも唯香には笑っていてほしかった。俺がうれしいときも悲しいときも、気が付くといつも一緒にいてくれた大切な幼馴染だから。
「唯香。少し待っていろ。ちょっと行ってくるから」
「うん。がんばって」
唯香は涙を拭きながら、俺に向かって言った。
俺はマシンガンを構えた。
「負けるものか」
俺はそっとつぶやいた。唯香のため、それもある。だが、誰よりも俺自身の満足のため、ここは絶対に勝ちたいと強く思った。
相手が女王だろうが誰だろうか、そんなの関係あるか。
サンドラ目がけて突撃を開始した。
サンドラは三ノ宮さんから離れると、いつもの作り物のような笑顔を浮かべると、ショットガンを構えた。
そしてお互いの銃口が火を噴いた。
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