第1359話 地中からの先

「見た事が無い地下施設が北大陸に建築されていたというのは当然驚きだけど、もっと気になるのは周辺の壁の作りが先史遺産の遺跡とも異なっている事だ。

もしこれが先史遺産の遺跡ではなく、ブントが人為的に作り出しているのだとすればその行き先は……」


天之御の疑問はこの施設が建築されていたことではなく、この施設が何処に繋がっているのか、又何処に向かっているのかという所にあるようだ。


「その手掛かりを得る為にも少し時間を割いた方が良いかもしれない」


小声で総口にした天之御はその部屋の扉を開けて外へと出る。

しかし外と言ってもその扉の奥も又人為的に作り出された壁で覆われており、此処が人為的な施設であるという事をより強調するだけであった。

だがその奥には先の見えない通路があり、この先に何かが存在している事は確かに感じられる。

それを確認した天之御はその何かを突き止めるべく、その先へと足を進めていく。


「奥へと進んでいっているけど此処は一体どうなっているんだ?さっきから……」


奥へと進んでいくにつれて天之御の疑問は膨らんでいるようだ。

それもその筈である、天之御が先程から進んできているこの通路内において周囲の壁は一切変化せず、そればかりか兵器も何も出現する気配が見られないのである。


「此処がもしブント側の施設であるなら少なくとも迎撃用の兵器くらいは出現しても可笑しくは無い、それすらも無いというのは一体どういう事なんだ?」


天之御の内心にはこの様な疑問が浮かび始めるが、その疑問は程無くして解かれる事になる。


「これは……そういう事なの?」


大分奥の方へと進んできたと思われる天之御の目の前に突如として見えてきた光景、それは掘りかけのトンネルらしき一部が崩れた地中と其の側にあるエレベーターであった。

エレベーターにはある程度の広さが確保されており、数人、あるいは中型兵器少数であれば運搬出来る事は容易に想像出来た。


「ここから地上に兵器を運び出しているって事か、だけどそれならこんな掘りかけのトンネルを作る意味は無い。

それを敢えてしているって事はつまり、このトンネルの行き着く先は……」


天之御はそう口にすると手元に再び端末を取り出し、現在地を確認する。

そして其の場所を見ると


「やっぱりね……だとしたらあの施設を放置する訳には尚更行かなくなった!!」


と自身を鼓舞するように少し大きな声で話し、踵を返して元来た道を戻っていく。

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