第1298話 深まる怨念

「嫌な空気が充満してきていますね……又亡霊が出現しようとしているのでしょうか?」


空狐がそう呟いたと同時に周囲の空気が変わり、再び亡霊が出現しようとしているのでは無いかという雰囲気が醸し出される。

だが其の予想に反し、動き出したのは周辺の地形であった。

突然ガタガタと物音を立て、次々に兵器が出現する。


「兵器!?周辺の地形に擬態していたの!?いえ、それよりもこの雰囲気は……」


岬が困惑した表情を見せると天之御は


「うん、あの兵器から間違いなく感じるよ。

あの兵器には亡霊が憑依している……兵器に亡霊が憑依する事でどうなるのかは分からないけど」


と兵器に亡霊が憑依している事を告げる。


「あの兵器、単に亡霊が憑依しているという訳でも無さそうだわ。

それによって性能が向上しているのかも知れない、油断しないで」


星峰はそう告げると剣に手をかけて交戦体勢を取る。

それに合わせるかの様に天之御も剣に手をかけて構える。

それを合図にしたかの様に兵器は一斉に襲いかかってくるが、星峰と天之御は言葉を発する事もなく剣を振るい、襲いかかってきた兵器を一掃する。


「凄い……兵器を一振りで……」


其の一部始終を見た涙名が唖然とした表情で其の流れを見つめるが、星峰は


「兵器は確かに破壊出来たけど、この場を包んでいる嫌な空気は消えていないわ。

他に何か居るのか、或いは兵器の中の怨念は存在しているのか、其の何方かよ」


と良い、警戒を怠らないように呼びかける。

すると其の呼びかけ通り、場の空気が重くなり亡霊が現れる。


「靄も出現していないのに亡霊が出現するなんて……ここは亡霊の執念がより強まっているというの?」


岬はこう困惑した声を上げつつも亡霊が実体化すると同時に格闘術を仕掛け、現れた側から実体化した亡霊を退ける。


「この亡霊……特別強い訳ではないけれどこの感じ、今まで遭遇してきた亡霊より明らかに強い怨念を感じるわ」

「そうだとするとここで何が起こったって言うんだ?

大きな虐殺が起こったって訳でも無さそうだけど……」


亡霊の出現の仕方が此れまでと明らかに異なっていた事、何時も出現する靄が出現しなかった事が一同の中に疑問を生じさせる。

一方、亡霊や兵器の後続は出現する事は無く、此れ以上の戦闘は発生しない様に思えた。


「ここから先に何が待っているのか、それを調べない事には話が進みそうにありませんね」


涙名がそう告げたと同時に一同は止めていた足を再び動かし始め、先へと進んでいく。

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