第1299話 霧散する靄

一同は周囲を見渡しながら先に進んでいくが、其の道中は兵器も亡霊も出現せず、又データ等が出来る様な場所も見当たらない。

一見すると只単に誰かが住んでいただけと思える。

兵器や亡霊が出現していなければ一同もそう思っていただろうレベルである。


「本当に何も見当たりませんね、先程の亡霊や兵器がまるで嘘の様です。

擬態兵器すらも出現してこないとなるとここはやはり居住地域なのでしょうか?」

「そうかも知れないけど、警戒は必要だよ。

ここが元々居住区だったとしても兵器がいた事や先史遺産の遺跡と繋がっているという事実は変わらないんだから……そしてこの先にも何か有るみたいだしね」


周囲を見渡しながら岬が何も見つからない事をぼやいていると天之御が緩みがちな警戒心を引き締める様に告げる。

無論、岬も警戒心を緩めている訳では無いのだが天之御には少し油断している様に映ったのだろうか?

岬は少し不服そうな表情を浮かべるが、一方で自戒する様な表情も浮かべる。

そして天之御の言う通り、一同が向かっている先にはトンネルの様な通路が見えてきていた。


「又トンネルの様な通路が見えてきましたね……ここも何処かに繋がっているのでしょうか?」

「コレ自体が擬態兵器であるというケースを除けばそういう事になるだろうね。

幼児では無いのだから穴を掘っただけで満足したって事は無いだろうし」

「寧ろ其の方が有り難い気はするけどね、ここの光景の様に穏やかに過ごせるという意味では」


空狐がトンネルについて疑問を呈し、天之御がそれについて返答すると涙名が毒気づいた言動を続ける。


「ここから先に一体何が有るのか……行ってみるしか無いわね」


星峰がこう発言するまでも無く、一同はトンネルを潜ろうとする。

だが其の直後に周囲から靄が発生しようとしてくる。


「又靄が!?亡霊が出現する前兆って事か……」


靄が出現し始めた事に警戒し、交戦体勢を取る八咫、だが其の予想に反し靄は直ぐに霧散していく。


「何だ!?靄が直ぐに消滅していったぞ……亡霊が出現するのを止めたのか?」

「そんな理性が働く奴等であるなら元から出現したりしないと思うけど……

出現するつもりだったのに出来なくなったのか、それとも何か他の目的が有るのか」

「何れにしろ、亡霊も一枚岩と言う訳では無いのかも知れないわね」


此れまで生じた事のない亡霊の消滅という事態に対し、八咫や空狐、星峰は口々に亡霊が出現しなかった事について感想と仮説を述べ始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る