第1297話 彷徨う存在
「そうね、ブントが地上で街一つを軍事施設として建設していた事案も有るし」
「と言うよりもブントの行動自体、この戦士遺産の劣化版、或いは模造品の様な部分がある。
そう考えればそうなっていたとしても別に不自然な話じゃないよ」
星峰の出した懸念に対し岬が言葉を続けると涙名が唐突に毒気づく。
その発言に他の面々は少なからず困惑したが、敢えて突っ込まない事にした。
其の毒は単なる息抜きの様にも思えるが、何処かから強い怒りを感じたようにも思えたからだ。
「だけどブントは少なくともここには来ていない様だね、見てよ、この周辺。
綺麗に片付けられてる。
少なくとも賊が立ち入った形跡は見当たらない」
天之御がそう告げると一同は周囲を見渡し、其の言葉通り周囲が綺麗に整えられている事を確認する。
足跡等も見当たらず、天之御の言う通りここに生命が立ち入った形跡は見当たらない。
「確かにここに生命が立ち入った形跡は見当たらないね、だとしたらここはまだブントが発見出来ていない先史遺産の遺跡なのかも知れない」
「考えられなくはないね、あの施設があったのは北大陸であり、北大陸はブントの侵食は他の大陸と比べて明らかに少ない。
故にこの遺跡の事をブントが知らなくても不思議ではないですね、さっきの施設にしても北の侵食の足掛かりとして使う目的も兼ねて虎の子にしている可能性も出てきたわね」
涙名が天之御の発言の内容を確認すると星峰も其の裏付けとなる根拠を述べる。
更に先程の施設の更なる利用目的も推察出来、今回の作戦の失敗は更に許されなくなったと言う事を自覚せざるを得なくなる。
「けどそんな場所であれば敵は出てきそうに無いですね、もし出てくるとしたら……」
「居住区防衛用の兵器か、或いは先程と同じ亡霊か、何れにしても哀しい存在ですね。
本来の目的を見失い、彷徨っているだけなのですから」
岬が敵についての心配をすると空狐は何処か悲しげな表情と声を浮かべる。
兵器はともかく、亡霊についてはなにか思うところがあるのだろうか。
そうこう口にしつつも一行は居住区の中を調査しつつ、先へと進んでいく。
だが中にあるのは生活空間に必要な雑貨や器具ばかりであり、特に兵器や遺跡、先程の施設についてのデータについて知る事が出来そうな物は見当たらない。
「この辺りは兵器や施設について何か手掛かりになりそうな物は見当たりませんね、更に先に進めば何かあるのでしょうか?」
岬がそう呟いた直後、一同の足が止まる。
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