第1248話 抜け出せない漆黒

「液体金属の採取場所も記載されていますね、態々兵器の生産データに記録している所を見ると余程重要な事なのでしょうけど、それだけとは思えません。

何か他にも理由がありそうですね」

「例えば?」

「素材を解析し、自分達で生産出来る様にする為の加工を行っている等です。

これまで生産してきた素材や兵器と比較するのが最も簡単なテスト方法でしょうから」


シレットが呈した疑問に対しモイスが例題の提示を聞くとシレットはこう明言し、其の疑問が決して単なる推測ではなく、少なくとも自分の中では形として整っている事を告げる。

それを聞いたモイスは


「たしかに其の可能性も考えられるな」


とシレットの仮説に同意する。


「採掘場所はこの施設を初め各大陸の地下、それもこれまで発見されてきた遺跡の近くに集中しているわね。

何れも兵器との交戦記録が私達、魔王陣営共に確認出来る場所であり、液体金属の採取場所の近くに施設、もっと言ってしまえば遺跡が置かれているのはほぼ確定事項よ」


液体金属の採取場所を確認したコンスタリオがこう告げるとシレットは


「なら、あの時行った亡霊の巣窟も……」


と呟き、其の呟きを聞いたコンスタリオは


「ええ、その近くにも確認出来たわ。

当然の事ながら私達があの時足を踏み入れたエリアには存在していなかったけど」


とシレットの発言を肯定し、同時にあの時探索出来ていなかったエリアがある事も知る。


「このデータから考えると、もしこの擬態兵器がブントによって大量生産されたらとんでもない驚異になるわね。

街そのものが要塞のような存在となり、外部からの侵攻は勿論の事、内部の反乱の鎮圧も非常に容易になる。

そうなればブントが独裁を行うのは火を見るより明らかだわ」


コンスタリオが指摘した擬態兵器の恐ろしさはモイスとシレットの顔を驚かせ、同時に気付きにも導く。

コンスタリオのこの発言が出てくるまでの間、二人は擬態兵器を単なる兵器としてしか見ていなかったのだ。

だがそれが甘い考えであるという事に今コンスタリオの発言を聞いて気付かされる。


「それじゃ、万が一この部屋に潜んでいたとしたら……」

「ええ、今私達がしている事も筒抜けになっているわね、そして既に鎮圧部隊が動いている筈」

「ならまだ安心……でもないですがこの部屋には仕掛けられていないという事でしょうか?」

「そう思いたいけど、そう言い切る事も出来ないわね、何しろこの擬態兵器について、私達は無知すぎる。

もしこのデータに記録されていない事があったら……」


調べれば調べる程深みにはまる、そんなデータにコンスタリオ小隊も焦燥感を募らせる。

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