第1249話 口にできぬ言葉
「他に擬態兵器についてのデータは無いのですか?」
「ええ、このデータルームに記録されているデータはここまでよ、他のデータルームに向かえばもっと何かを掴めるかもしれないけど」
シレットの問いかけに対しコンスタリオはこう返答し、擬態兵器の情報、データはこれ以上入手する事は出来ないという事を伝える。
「だったら次は整体制御装置を組み込まれた兵器だ、此方はある意味擬態兵器より悪質だぜ。
このデータを見逃す訳には行かねえ、それに……」
モイスはそう言いかけて口をつぐむ、いや口から出かけた言葉を飲み込んでいるというべきだろうか。
「それに……何?」
シレットが問いかけてもモイスは何処か言い辛そうな表情を浮かべる。
だがその表情を見たコンスタリオが
「アンナースの事でしょう?」
と諭す様に問いかけるとモイスは言葉こそ続けないものの、その表情は明らかに困惑した物になる。
「貴方の言いたい事も分かるわ、整体制御装置を搭載した兵器のデータを入手する事が出来ればアンナースを救う手立てが見つかるかもしれない、そういう事でしょう」
コンスタリオに更に問い詰められ、モイスは観念したと言わんばかりに言葉こそ口に出さないものの、首を縦に振って頷き、コンスタリオの言葉に同意する。
「それならはっきり言えばいいでしょう」
「それはそうなんだが……」
「だが……彼女は元からブントの構成員……いえ、ブントによって作り出された人工生命である事が気になっているの?」
尚も続くコンスタリオの問いかけにモイスは只言葉を詰まらせる。
それ程アンナースについての事は言い出し辛いことだと感じているのだろう、だがそんなモイスを見たシレットは
「私だってあの子を助けられるのであれば助けたいと思っているわ、例えあの子自身がそれを望んでいなかったとしても、ブントの構成員として私達に牙を向いてきたとしても」
とモイスに対して告げる。
その表情は真剣且つ曇りがないものであり、其の言葉が本心であるという事を物語っていた。
「ああ、そうだな。
ここで俺達が其の言葉を発するのを躊躇ったらアンナースを救うなんて出来ねえ」
シレットの言葉にモイスも覚悟を決めたのか、押し留めたと思わしき言葉を遂に口に出す。
「んら、其の希望を紡ぐ為にも問題のデータを調べ始めるわよ」
コンスタリオはそう口にすると整体制御装置搭載兵器のデータを確認し、その詳細を調べ始める。
其の一番下の兵器の名前を調べ、その詳細を画面に表示させる。
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