第1235話 奇妙な被害が示すもの

「皆、周囲を見て。

見たことある様な光景が広がっているよ、実際に来たという訳では無いんだろうけど」


涙名がそう言うと一同は周囲を見渡す。

すると其の通り周囲はこれまで何度も訪れた事のある先史文明の遺跡で良く見られた技術で作られた建物や痕跡が見受けられた。


「遺跡……しかもこの規模となるとかなり広い遺跡になるね、恐らく此処は元々居住区……否都市だったのかもしれない」

「ええ、建物もかなりの数があった事が確認出来るわ、かなり荒廃している様に見えるけど」


天之御と星峰がそう口にしたのを皮切りに一同が更に周囲を見渡すとそこには確かに建物の土台となっていたであろう基礎部分や残骸が見受けられた。

それだけではない、ざっと周囲を見渡しただけでは気付かなかったが、周囲にはまだ生命が居住出来そうな建物もかなりの数が確認出来る。


「破壊されている建物はこの施設の周辺に集中しているようですね、という事はつまり、この施設が敵対する側の攻撃を受けた結果巻き添えを食らったのでしょうか?」

「其の可能性は考えられるけど、どうしてそんな巻き添えを食らう様な場所に建物、それも生命が居住する建物を建築したのか、其の点が不自然ね。

施設そのものがダメージを受けていない事を考えると生命の安全性を確保するのであれば建物の中に避難経路を作った方が確実でしょうに」


周辺の建物被害を目にして空狐が疑問を口にすると星峰はやや皮肉交じりの言動で其の被害に対しての仮説を立てる。

だがその仮説に対し


「或いは元々生命なんてどうでも良かったのか、それとも元々施設の中で生み出された部品としてしか扱われていなかったのか」


と天之御が更なる仮説を重ねると一同はその仮説に対し理解は示すものの、全く納得はいかないという表情を浮かべる。

そしてそれは仮説を立てた本人も同様であった。


「とにかく、それを調べるにはこの遺跡を進んでいく必要があるわね、急ぎましょう」


星峰が発破をかけた事により、一同は此処で考えていても仕方ないと思い先へと進んでいくことにする。

しかしその先にあるのは建物ばかりであり生命はおろか兵器すらも出てくる気配がない。


「建物ばかりの遺跡ですね……先程の施設が防衛前線の全てなのでしょうか?」

「もし仮にそうだとしたらあの施設だけでこの遺跡の防衛は全て賄っていた事になる、決して油断しないで。

それに何時ぞやのように擬態した兵器が隠れている可能性も無いとは言えない」


遺跡を進んでいく一同を天之御は警戒心を緩めない様に意識させる。

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