第1221話 怒りと冷静の間で

「住んでいた生命が人工生命……確かにそう考えれば生命を一掃する理由にはなると思うが……それで何でシレットの育ての親がこのタウンに居住している事と繋がるのか?

シレットの育ての親が人工生命であるなら何故シレットを引き取らせたのかという点が非常に不自然な話になる。

シレットが其の秘密に気付かないとも限らないのだから」

「私がもし気付いたら間違いなくブントの事を知ったら敵対したでしょうね、或いは其の上で私を戦力に取り込もうという魂胆なのかもしれないけど、それにしたって粗がありすぎる。

何もここで育てる必要は全く存在していないのだから」


モイスが呈した質問に対し、シレットは怒りと同様で混乱しそうになる頭を辛うじて抑えながら回答を整えて口から言葉にして出す。

モイスの中にはシレットに対し冷静さを持って欲しいということなのかも知れない。

そう思えるような部分もあった。


「それからこの施設の調査は行われて居るんですか?」


シレットがコンスタリオに問いかけるとコンスタリオは


「少なくともこれ以上この文章には調査記録は記載されていないわね、更に言ってしまえば他の記録文章も無いからそれ以降個々の調査は行われていないと考えてまず間違いないと思うわ」


と文章がここで途切れている事、及びこれ以上の調査は行われていないであろう事を告げる。


「そうですか……私の故郷について少し分かっただけでも幸いなのかも知れませんが……」


シレットが小声でそう呟いたのを見てモイスとコンスタリオはそんなシレットに対し掛ける言葉が見つからない。

少なくとも其の見た目は落ち込んでいるようには見えないが、それが虚構である事は明らかだったからだ。


「他にも何か分かるかも知れないわ、もっと隅々まで調べてみましょう」

「それがいいと思うが、さっきの文章を見る限りずっと調査が行われていなかったこの施設が何でこのタイミングで浮上してきたのか、其の点が疑問としてずっと残ってるぜ」

「それを調べる為にもデータを見るのでしょう」


コンスタリオがさらなる調査を宣言するとモイスは疑問を差し挟むが其処にシレットが其の疑問を解決する為にも調査を続けるという事を確認する。

そして更に機器を調べていこうとするが、其の途中で何か機密情報に引っかかったのか、パスワードの入力が必要なファイルにシレットが辿り着く。


「このファイル……パスワードが必要な様ですね」


こんな所にあるパスワードが必要なファイル、其の点だけで不自然さを感じるには十分過ぎる材料であった。

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