第1219話 偽りのタウン

「この文章の日付、今から三十年位前ですね、つまりこの施設は少なくともその時点ではもう既に起動していたと言う事なのでしょうか?」

「そう考えるのが妥当な線ね、其の時はまだ起動を全開にする必要はなかったのかもしれないけど、少なくともブントの支配下には合ったと見てまず間違いない。

続きを見ていきましょう」


シレットとコンスタリオがこう話した後、画面を下にスクロールさせて更に文章を探していく。

すると続いて


「この施設は地上への浮上が可能となっているが、一体何の為にこんな機能がついているのか、其の謎は大きな壁となって立ちはだかるだろう。

だがそれ故に奴等にこの施設を知られる訳にはいかん、故にこの上に偽りのタウンを作り、そこにこの施設を隠す事となった。

無論、いざという時は浮上させれば済む話だ」

「調査を初めて数年、現在起動できている部分以外には未だに何の発見も得られていない、何か方向性が間違っているのだろうか?

調査対象を此処よりもさらなる地下へと広げる、上層部がそう決定した」

「調査開始を目前にして奴等にこの施設の事を勘付かれそうになっている……奴等の執念は尋常ではない、そう時間が立たない内にこの施設に向かってくるだろう、そうなる前に……」

「浮上をさせるまでもなく、魔神族側の我等の勝利により偽りのタウンは瓦礫となり、調査を進めようとした人族側の奴等は抹殺出来た。

しかし、これによりタウン部分が無くなった事で生活が少々不便になるのは否めない」

「新たな魔神族の魔王は相当な切れ者の様だ、北大陸も全般的に調査している。

偽の報告書で誤魔化してはいるが、此処を気付かれる可能性も否定出来ない。

已むを得ず上層部はこの施設の調査を一時中断することとした、最も、成果を上げられていない我々に対する当て付けの様な側面もあるのかもしれないが」


文章の最後はこう綴られており、それをみたコンスタリオ小隊、特にシレットは拳を握りしめ、そして震わせていた。

それが怒りの震えである事はコンスタリオ、モイス共に口に出さずとも分かっていた、彼等も同じく内心に怒りを感じずには居られなかったからだ。


「偽りのタウン……ですって……巫山戯ないで、例えタウン自体を作ったのがブントであるとしてもそこに住む生命まで自分勝手にする権利があんた達にあるっていうの……」


怒りに口と手を震わせながらシレットはそう口にする、無論、それが詮無い事で有る事は分かっていたが、それでも口に出さずには居られなかった。

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