第1207話 シレットの焦燥 それが示す物

「けど、今そんな和やかな井戸端会議をしている時間はなさそうですよ」


空狐がそう告げると同時にコンスタリオ、天之御共に表情が真剣な物に戻り、施設の入口へとその視線を移す。

すると早くも次の兵器集団が集結しており、中には入らせないと言わんばかりに防衛前線を構築していた。


「既に防衛戦力を相当数投入か、どうやら此処は相当大切な施設なのかも知れませんね。

最も、そんな施設が何故今になって地上に出てきたのか、其の点が引っかかりますけど」

「誘い出して一網打尽にしようって魂胆か、それとも地上に出現させざるを得ない位に追い詰められているのか、何れにしても此処でじっとしてても始まらねえ、先に行ってみようぜ」


岬と八咫がこう告げるとシレットは


「其の通りですね、此処で立ち止まっている訳には行きません」


と言いながら一同の先陣を切り、前方を守っている兵器の集団を雷撃の魔法で一掃しつつ先へと進んでいく。


「あ、一寸シレット!!焦っては駄目!!」


コンスタリオがそう叫ぶも虚しく、シレットの移動の鋤を突こうとして兵器が接近しその手元のギロチンを首元に擦り付けようとする。

だが其処でモイスが


「やらせるかよ!!」


と言って兵器の武装目掛けて拳銃を撃ち、其の部分を貫いて破壊し、シレットが攻撃を受けるのを防ぐ。


「有難う、モイス」

「それは良いが、少し焦りすぎだ、これはお前だけの課題じゃないって事、忘れんじゃねえぞ」


シレットの返礼の言葉に対し、モイスは悪い気はしないという表情を浮かべつつもシレットに言葉で釘を刺しておく。

実際、今のシレットの動作が焦燥感に駆られた物で有る事は天之御達から見ていても明らかであった。


「彼女、今の指摘を待つまでもなく焦燥感に囚われているわね……」

「やはり此処が彼女の育った場所であるという事が関わっているの……」


空狐と岬のこの言葉からもそれは明らかであった。


「ある程度仕方ない部分もあるかも知れないけど、今の動きを見ている限りそれが今回の行動で問題を引き起こす可能性は否定出来ない。

星峰、万が一の際には君が率先して援助に回って」

「其の必要はないと思いたいけど、この状況ではね……了解したわ」


天之御も星峰にシレットを万が一の際に援助する様に告げる。

やはりそれぞれの立場からしてシレットの援助には星峰が最適であると判断したのだろう。

その真意は察したのか、星峰も反論する事無く其の申し出を受け入れる。

そうしている間にも兵器は確実に一同に迫りつつあった。

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