第1188話 命なき場所

「このタウンで特に被害が大きかったのはこの辺りね、出現箇所から近い市街地、酷い物だわ」


シレットが施設を後にしているのと同じ頃、コンスタリオも又市街地を調べていた。

コンスタリオの調べているタウンで被害が大きかったのは兵器の出現エリアであり、周囲には民家が立ち並んでいる。

シレットやモイスが調べた場所が大型の建物が立ち並んでいる場所であったのとは対象的である。


「建物は全てある意味等しく破壊されている、何処かが集中的に攻撃されたという訳ではなさそうね。

そしてそれを行ったのは恐らく遺跡から出てきた兵器、現在其のエリアは封鎖されている、当然といえば当然の話だけど」


周囲を見渡したコンスタリオはそう呟くと封鎖されている其のエリアに向かって行く。

封鎖されていると入っても周囲には見張りの兵器も兵士もおらず、誰かが中に入っても気付かない状況だ。

或いはそれを見越して居るのだろうか。


「誰も居ないんじゃ封鎖の意味が無いような気もするけど、まあこんな所に近付こうとする生命も居るとは思えない。

私の様な例外的な存在を除けば……ね」


コンスタリオはそう呟くと一旦足を止め、近くの民家へと近付いていく。

敢えて足音を立て、接近しているのをアピールしながら。

だが其の足音に民家から何かしらの反応が見られることはない、それも一件だけでは無い、全ての民家から物音が聞こえてくる気配すらない、否、物音すら聞こえてこないという方が正しいのかもしれない。


「民家が有るのに物音一つ立たない……眠っている様な時間でもないのにこれは不自然すぎるわね」


コンスタリオはそう思うと双眼鏡を取り出し、民家の窓を確認しようとする。

だがどの民家の窓も外からの視線が遮断されており、中の様子を外から見る事は出来ない。


「民家の窓も視線が遮断されているか……まあ、戦時中であれば仕方の無い事7日もしれないけど、それだけじゃ済まない気がするわね。

考えられるのは……曰く付きなのかそれとも」


そう呟きながらコンスタリオは一軒の民家に近付いていき、その扉を叩く。

だがそれにも反応は見られない、家を変えて同様に扉を叩いていくものの、やはり同様に反応は見られず、コンスタリオの内心の疑念は益々深まっていく。


「戦場になった事で放棄されたと考える事は出来なくはない、だけどどうにもそうは思えない部分が有るわね……」


生命の気配が感じられない、そう思えてくると全てがブントに繋がっているのではないか、そう思えてならないのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る