第1156話 それぞれのやるべき事

「それってつまり……あの子の事なの?」


シレットが言うあの子とは誰の事を刺しているのか、それは其の場にいる全員が承知していた。


「分かりました、では私達は発掘現場に向かいます!!」

「もし何かあったら僕達も向かうよ!!だからくれぐれも無理はしないで」


司令の意図と自らの思いを胸に秘め、コンスタリオは其の場から駆け出していき、シレットとモイスもそれに続いていく。

それを見送った天之御は


「さて、僕達もおとなしくお留守番しているという訳にはいかないね」


と意味深な呟きを行う。

それを聞いた空狐が


「確かに其の通りではありますが、今回はあまりにも広範囲に敵が展開しすぎています、これでは此方が動こうにも他に戦力を集中される恐れもありますよ」


と天之御に対し諭すような発言を行うものの、其の顔には明らかに別の思考が浮かんでいるような印象があった。

空狐の発言に対し天之御は


「そう、確かに今回の攻撃は一度に十箇所以上を同時に攻撃してきている、そして其の攻撃先が大陸を跨いでいる以上、僕達が分散して各個に応戦していけばいいという類の物ではない。

だからこそ僕達がするべき事があるでしょう」


と返答する。

其の様子から空狐が何を言いたいのかは分かっていると言った印象だ。


「そういう訳だから総司令官、君は引き続き救援に向かわせた部隊の指揮を全面的に取り、其の上で何かあったら僕達に報告してほしい」


天之御が総司令官にそう告げると総司令官は


「了承致しました!!では失礼します」


と言って通信を切る。


「いまのが総司令官なのね、私は初めて其の顔を見たわ」


そう星峰が呟くと天之御は


「まあ、普段は北大陸の魔王城に居るからね、北大陸に余り出入りした事のない星峰は面識が無くても仕方ないと思う」


と返答する。

其の空気は作戦中でなければ和やかな茶会が始まりそうな雰囲気すら醸し出していた。


「でもそうだとしたら、北大陸を狙ってくる可能性もあるのではないでしょうか?余裕を持たせてあるとは言え、北大陸の戦力は多少なりとも低下している筈です」

「そうだね、そして其処が気になる点だ」


ブエルス司令の呟きの後に続く天之御の返答は何処か引っかかりを感じるものの、今はそれを聞いている場合では無いというのも又理解していた。

一方、飛び出していったコンスタリオ小隊は其の勢いのままに飛空艇に乗り込み、至急発掘現場へと向かっていた。

そして発掘現場に到着すると其処には既に兵器が多数展開されているのが肉眼で確認できる。

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