第1155話 それぞれの向かう先

「各大陸に部隊を出撃させた!?それって……」

「殿下のご命令でブントの配下を追っていく内、何か奴等が仕掛けてくるのは想像出来ていました。

直接目で追うとそれだけの事は把握出来るのですね、殿下が現場に自ら赴きたがるのも納得です」


少し困惑した声を上げる岬を尻目に司令官は少し皮肉った様にも聞こえる発言をする。

その発言を聞いた天之御は若干赤面しているようにも見える。


「そして万が一の事態に備え、各街の部隊に常に出撃可能な部隊を一定数待機させておいたのです。

最も、直接攻撃ではなく人族部隊の方に先に仕掛けてくるというのは想定外でしたが。

そして今回の行動、まだ命令を受けてはいませんがこれを放置しておく事は出来ませんでした。

出過ぎた独断です」


司令官は冷静ながらも怒りを感じ、同時にやや自虐的とも取れる発言をする。

しかし天之御に司令官を責めるつもりは毛頭なかった。

司令官の行動が正当な物で有る事は明らかであったからだ。


「否、司令官の備えでこうして兵器に対応出来ているのは確かだからね、その事について処罰を下すつもりは無い。

だけどあの兵器はこれまでの兵器とは違う、決して過信しないで人族との連携を常に念頭に置いて戦って!!」


天之御がこう返答し司令官を鼓舞するとその鼓舞は戦場の兵士達にも届いているのか兵士達の戦いが更に活発な物となる。


「通信先の兵士に改めて告げる!!今の通信が聞こえていれば分かるが転移してきた魔神族は少なくとも今は協力者だ、共闘し兵器の殲滅に当たれ!!」


ブエルス司令も又、通信先の人族部隊兵士にそう檄を飛ばし、各タウンにおいて兵器との戦いが始まる。


「なら、私達も……」


コンスタリオがそう言いかけるがそこで魔神族の部隊司令官が


「いえ、貴方達が向かうべき戦場はそこではありません、此方に向かって頂きたいのです」


と言って出撃しようとするコンスタリオ小隊を呼び止める。


「私達が向かうべき場所は他にある?」


シレットがそう司令官に尋ねると司令官は


「はい、今回の一件でブントの動きを調査している内、ある場所に気掛かりな物が有るということなのです。

それは此方です」


と話し、その場所を表示する。


「ここは……彼処だよな」


その場所を見たモイスは開口一番にそう口にする。

司令官が表示した場所は以前コンスタリオ小隊が調べた事がある発掘現場であった。


「あの発掘現場には確かに何かありそうだったけど、一体ここに何が……」

「貴方達と肩を並べていた少女がここにいる可能性があるのです」


シレットの疑問に対する司令官の返答はコンスタリオ小隊の表情を一変させるには十分な力を秘めていた。

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