第1127話 それぞれの司令官

「しかし、この状況で此方の戦力が、それも優秀な狙撃手が欠落したというのは大きな痛手と成り得ます、無論その責任はとって頂けるのでしょうね?」

「ええ、コンスタリオ小隊がついていながらこの様な自体になったことは慙愧の念に耐えません、しかしこのまま終わるつもりはありません。

アンナースの捜索及び救出は我々が責任を持って行います」


キャベルの司令が唐突に口を開き、ブエルス司令にコンスタリオ小隊の責任を追求しようとするとそれに先駆ける形でブエルス司令はコンスタリオ小隊のアンナース捜索、救出を口に出す。


「捜索と救出?しかしそれでは……」

「いえ、それだけで構いません。

現状私達が責任追及をしあってもアンナースが帰ってくる訳ではないのです、そうであるならばコンスタリオ小隊の責任はアンナースの捜索と救出という件のみで一旦保留しておくべきでしょう」

「まあ、西大陸の司令がそう申されるのであれば……」


キャベル司令が不満げな声を上げようとするとそれを制止するかの様に西大陸司令が声を挟み、その声を聞いたキャベル司令は言葉を引っ込めるものの、その顔には明らかに不満が浮かんでいた。


「西大陸の司令、ご配慮に感謝します。

ではこれにて、私は早速件の対処に取り掛かりますので」


ブエルスの司令官はそれだけを告げると席を立ち、そのまま部屋の外に出ていく。

それを確認したキャベル司令が


「西大陸司令、何故この千載一遇のチャンスを逃したのです!?コンスタリオ小隊を此方側に引き込む最後のチャンスかも……」

「そのコンスタリオ小隊が既に私達の存在に気付いているとしてもそれを口にしますか?


西大陸司令に不満をぶつけようとするキャベル司令だが、その直後に発された一言でその不満は何処かへと霧散する。

その表情に浮かんできたのは不満から困惑へと変わっていたからだ。


「コンスタリオ小隊が我等の事に気付いている……どういう事だ!?」

「やれやれ……貴方の上司はこんな重要な情報も提供しない程仕事が出来ないのでしょうかね?

それとも貴方が単にチェックをし忘れただけでしょうか?」


キャベル司令の行動が頓珍漢に見えたのか、西大陸司令は明らかに呆れた声と表情でこう告げる。

それに対しキャベル司令は不満な表情を浮かべるものの、自身が迂闊な行動を取ろうとしていたというのは理解した為に反論出来ない。


「既にコンスタリオ小隊は我々の存在に気付いています、アンナースの件もこれと無関係ではないでしょう」


西大陸の司令はこう言葉を続ける。

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