第1120話 思いに応える為に

「アンナースが私達をブントに勧誘する為に接触していたのならその情報を何らかの形でイェニーが入手していたとしても不思議ではない……確かに線は通っているわね。

そして仮にそうであるとするなら、南大陸内のブントの思惑も恐らくは交差している、まず間違いなくね」


コンスタリオがそう告げるとシレット、モイスは又してもコンスタリオの意見に同意する、それ以外に思い付く事が無かった為だ。


「南大陸内に潜伏しているブントの構成員がどの様な立場にいるのかにもよるとは思いますが、もしイェニーと足の引っ張り合いをしているのであれば横槍が入ってくるでしょうし、そうでないのであれば静観、加担しているのであれば積極的な関与が認められる筈です。

そして実際の所静観が最も答えに近いでしょうね、此処までの状況を見る限りでは」


シレットがこう告げるとコンスタリオも黙って同意し


「ええ、だからこそいま南大陸で何か起きればそこにブントの思惑を見る事が出来るのだけど、今の所動きは見られないわね。

これを問題と見るかチャンスと見るか……」


と現状を見つめ直すような発言をするがそこにモイスが


「それは違うんじゃねえか?」


と疑問を呈する。


「違う?どういう意味なの?」


モイスの意図が全く掴めないのか、コンスタリオが問い返す。

その表情は困惑しており、明らかに今の質問は想定外であった事を伺わせる。


「スターだったらきっとこう考える、いや言うと思うぜ。

チャンスと見るかじゃねえ、チャンスにするんだって」


コンスタリオの問いかけに対しモイスは少し強めの口調でこう答える。

それを聞いたシレットも


「そうですね……スターは何時だってそういう風に考えていました、決して屈する事なく。

それは魔王陣営となった今でも同じなのでしょう、だからこそ私達にデータを提供し、その正体を明かしてくれた」


とモイスの意見に同意する。


「そうね、ならばそのスターの意思に応える為にも早急にデータの解析を進めなければ」


二人の意見に納得した様子を見せたコンスタリオはその目線を再び端末の画面へと向け、まだ調べていない部分のデータを着実に調べ始める。

そして数時間をかけてデータを調べ、その中に記載されていた全てを確認し終えると


「ふう……ブントの大本に辿り着くとまでは残念だけど行かなかったわね」

「ですが、かなりのデータを得る事が出来ました、これは大きな収穫だと思います」

「そうね、ではその収穫のお裾分けを……と」


コンスタリオはそう呟くとデータを魔王陣営に送信する。

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