第1119話 イェニーの目的

「ええ、確かにこの施設に記録されていた兵器のデータと私達に与えられた飛空艇の構造は共通する部分、又は参考にしたと思える部分は多い。

だけど決定的に違うのが生命を制御装置としているかしていないかという点、この部分をイェニーが取り入れなかったのは生命を作り出す技術まで持ち出す訳にはいかなかったのか、或いは安定性を重視したか、今後のバリエーションとして後に組み込むつもりだったのか、その辺りが考えられる候補ね」


二つのデータを比較し、コンスタリオはこう仮説を立てる。

それを聞いたモイスが


「確かに考えられる可能性はその辺りだけど、何か他にもありそうな気がするんだよな……例えば、どうしてそんな飛空艇を俺達に与えたりしたんだ?

テストするなら自分達の所で行えばいいだろうに」


と言うとシレットは


「確かにその通りね、仮にイェニーが今後のデータ収集の為に私達に飛空艇を与えたのだとしても私達がデータを提供するとは限らない、その限らない可能性に賭けるような奴が制御に関しては確実性を取り入れる……どうにも合点がいかないわね」


とモイスの疑念に賛同する。


「シレットもそう思うのか……で、それについて何だが、俺の中で考えられるケースは後に俺達を取り込む為に恩を売っておこうとしたのか、或いは内部抗争で優位に立つ為に何としても飛空艇をプレゼンする必要があったか、その辺りだと思うんだが、どうだ?」

「私も同意見よ、イェニーがもし、ブント内の足場がために躍起になっていたのだとすればその辺りの可能性は十二分に考えられる。

只気になるのはそれをやるに当たってどの様な理由で私達を取り込む方向になったのか、その辺ね。

もし私達が元々ブントに目を付けられていたのだとすれば、一体何時頃から……」


モイスが続けて発した言葉に賛同したのはシレットではなくコンスタリオであった。

コンスタリオがあっさりと賛同するとは思っていなかったのか、モイスの顔には少し驚きが見える。


「隊長も賛同してくれるとは……正直意外だがそれを喜んでいられる様な話じゃねえな、イェニーが何を目論んでいたのか、その点とアンナースの件が繋がっているような、そんな気が俺の中でしてるんだ」


モイスは驚きを見せつつも言葉を続け、それを聞いたシレットは


「アンナースとイェニーに何か関係があるって事?」


と問いかける。

するとモイスは


「いや、直接関係があるのかどうかは分からねえ、だがイェニーが俺達の事を知ったのはまず間違いなくアンナース経由だ、そう考えると……な」


と少し自信なさげな声で返答する。

その内容も曖昧ではあるが、シレットもコンスタリオもそれに苛立ったりはしない。

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