第1057話 制圧の悔恨

「さっき申し訳ないって言ってたけど、一体何があったの?」


天之御が魔神族に問いかけると魔神族は


「街の司令部を兵器に制圧されました……其の結果指揮系統が乱れ、街の各部に散開している部隊の連携が取れなくなっています……」


と申し訳ないと言わんばかりの声で告げる。


「司令部の制圧を許した!?それがこんなにあっさり行われるなんて……」

「ええ……我々の慢心なのかも知れません……兵器同士の連携の話は聞いてはいましたが、まさかここまでとは……」


兵士から告げられた内容に困惑した声を上げる岬、一方の天之御は


「確かにこの街は僕達側の領地になってから日が浅く、まだ此方側が全体像を把握しているとは言えない状態にあった、それに部隊が着任してからの日も浅い。

だけど各エリアに兵器を散開させつつ、其の上で正確に司令部を制圧してきたとなると、やはりこの兵器達はこの街の攻め方を分かった上で行動していると考えてまず間違いない」


とこの状況を冷静に分析する。


「おい、そんな風に冷静に分析……」

「いえ、魔王の分析は正解よ、これで私達が向かうべき場所は決まったもの」


この状況で分析を行う天之御に反発しかかるモイスだが、直後にコンスタリオがモイスを諭す。


「向かうべき場所が決まった?」

「ええ、其の司令部に向かうべきという事がね」


シレットがコンスタリオに問いかけるとコンスタリオは明確にこう返答する。

更にそこに


「そう、司令部を取り戻す事が出来ればそのまま反撃の糸口を掴めるかも知れない。

何しろ敵の全体図を知る事が出来るのだから」


と涙名も言葉を続け、その行動に説得力を持たせる。

だがコンスタリオはそれに留まらず


「それだけではないんでしょう?場合によっては……」


と更に何かがあるのではないかと思わせる言葉を続ける。

それを聞いた星峰は


「流石に鋭い指摘ですね。

場合によっては司令部そのものに兵器の創造主に取って見られたくない、抑えておきたい物が存在している可能性も考えられます。

其の可能性も考慮した上で司令部に向かうべきでしょう」


とコンスタリオの言葉に続ける。

彼等の発言を聞き、周囲の魔神族達は


「では、街の中に散開している兵器は私達が引き受けます」


と告げて其の場から移動していく。


「あ、一寸、まだ負傷の傷は完全には……」


先程負傷していた魔神族達も走っていくのを空狐は静止しようとするがそれは間に合わず、少し呆れたような表情を浮かべる。


「やれやれ……もしこれで又負傷したら後で処分物だね……なら、彼等の為にも一刻も早く司令部を奪回しないとね」


空狐の心境を察したのか、天之御は明らかに本心ではないもののこう告げる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る