第1058話 狐妖術が表す疑問

そして一同は其の足を街の司令部に向け、移動を開始する。

だが其の直前コンスタリオは


「今の会話……何か引っかかるわ……

それにスターの姿をしたあの魔神族、確かさっき兵士に……」


と内心で別の疑念を抱いていた。

其の疑念は先程のやり取りで生まれたものであり、敵意とは又違うものの天之御達の会話に何かを感じていたのだ。

だが今はそれを口にしている余裕はないと言い聞かせ、天之御達と共に司令部へと向かう。

一方アンナースも又


「何故私が魔神族と行動を共にしているの……しかも相手は魔王、この状況ならば打ち取るのは容易くは無くとも不可能ではないのに……

それに故郷を襲撃したのだって……でも、それでも尚私の中には拭い去れない何かがあるというの……」


と自身の中に生じた疑念を感じつつもそれを打ち消すような言葉を自らかけ、思考の輪廻に陥っていた。

考えれば考える程正解が見えない、そんな状況になっていたのだ。

そんなアンナースの、そして一同の目の前に侵攻してきた兵器の部隊が現れる。


「ここで兵器と遭遇するとはね……此方の動きを察知して追撃に出てきたのか、それとも単にここで遭遇しただけなのか」

「可能性は五分五分といったところね、けど、どちらの理由であるにせよこの兵器を放置しておく訳には行かないわ。

万が一他の街に向かう様な事があれば被害が更に拡大する事になる」


涙名と星峰はそれぞれこう口にすると顔を見合わせ、そのまま無言で頷いて兵器にその視線をやる。


「闇衝撃刃」

「狐妖術……純黒の三日月」


そしてそれぞれこう発言すると兵器に対して黒い斬撃を飛ばし、目の前に現れた兵器を全て一刀両断する。


「この力……やっぱり敵として戦うと恐ろしいけど……」

「共に戦う分には頼もしくはなる……な」


自分達が苦戦した兵器を難なく一掃する天之御達を見てシレットとモイスは思わず内心を吐露する。

その内心には出来る事であれば天之御達とこのまま共に歩んでいきたいという願望のような物も含まれていた。

一方今の流れを見たコンスタリオは


「又狐妖術という言葉が出てきた……しかもさっきとは使い手が異なる……

そしてそれぞれの使い手の姿……これが意味するものは……」


と先ほど抱いていた疑念を更に強める。


「先を急ぐよ!!この調子で足止めを連呼されたら厄介な事になる」


天之御の其の一声で一同は其の足を早め、更に司令部へと近付いて行く。

そして司令部の入り口につくとそこにはやはり兵器が待ち構えていた。

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