第1056話 故郷を蝕む曰く

「街の各地に戦力を散開か……攻め方を分かった上での行動と考えて良いんでしょうね」

「一寸待って!?それじゃあの兵器は初めからこのタウンの侵攻の為に生産されていたっていうの!?」


魔神族の発言を受けて冷静に分析する星峰に対し、シレットが疑問をぶつける。

すると星峰は


「侵攻とは限らないわ、あの施設の建造主とこのタウンの建造主が同一の存在、或いは同盟者であるのであれば其の目的は生産ラインと居住区の分散という事になるでしょうから」


と返答し、それを聞いたコンスタリオは


「つまり、あの施設はこのタウンで運用する兵器を製造する為に可動していた。

そういう事ね」


と告げ、その返答に対し星峰は


「ええ、更に言えばこのタウンだけではなく、他のタウンに対しても同様の魔法陣を展開していた可能性もあるけど。

そしてそれが攻撃しているという事は恐らく、兵器のプログラムの中に証拠の隠滅も含まれている可能性が高いわ」


と言葉を続ける。


「証拠の隠滅とは?」


駆け寄ってきた魔神族兵士が星峰に問いかける。

すると星峰に変わり天之御が


「つまり、この街と施設の何方か、或いは両方で非常事態が起こった場合、それを完治した兵器が施設と街の何方か、或いは両方を消去するようにプログラムされているって事だよ。

そしてそれはつまり、この街にもあの施設にも見られたくない物がある事を物語っている」


と解説するがそこにアンナースが


「そんな……私の生まれ故郷にそんな物が存在しているはずが……」


と噛み付こうとするものの、ここに来るまでに起きた事が頭の中にあるのか其の反論は何処か歯切れが悪い。


「故郷に曰くがあるなんて信じたくないという気持ちも分からなくはないよ、だけど其の曰くはこのまま野放しにしておいたら何れその大切な故郷さえも奪い尽くすことになる」


天之御がアンナースに対し、諭す様にそう告げるとアンナースは返す言葉もなく黙り込む、それは故郷が襲撃されているというショックなのか、それとも……

そこに


「で、殿下……申し訳ございません!!」


と言う声とともに全身を負傷した魔神族が数人現れる。


「一寸貴方達、大丈夫なの!?今治癒するわ……狐妖術、純白の祝福!!」


其の様子を見た空狐は魔神族に駆け寄り、白い膜で魔神族を包み込んで其の傷を癒やしていく。

傷が癒えた魔神族は


「空狐様、ありがとうございます。

ですが……」


と感謝の気持ちと共に何処か申し訳ないといった印象の表情を浮かべる。

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