第1038話 既視感の疑念
「でアンナース、あなたはここで何をしているの?
少なくともその通路、ふらっとお散歩に行くような場所ではないでしょう?」
コンスタリオに逆に質問され、アンナースは動揺し返答を躊躇う。
「どうする……今ここで無理に離れれば更に疑いを深められてしまう……かと言って適当な出任せで煙に巻けるような相手でも無い……
しかし今回失態を犯せば上層部からは……」
その動揺の理由は明らかであり、この展開で行くと間違いなく先日と同様のパターンに陥ってしまうからである。
しかし、かと言って打開策も見当たらず返答に窮すが
「実は私も皆さんと同じ様に兵器のより詳細なデータが欲しいという要望を受けており、その調査の為に向かっているのです」
と何とか返答を考え出しその場を凌ごうとする。
するとシレットは
「確かにね……あのデータには色々と穴があったし、あれで兵器の解析が完全にできるとは思えないわね」
とその言葉に続けて少し呆れたような口調で話し、それを聞いたコンスタリオは
「データに色々と穴?司令官が渡したのが偽データだという事がバレているの?
もしそうだとしたら既に疑いは……」
と内心の不安を更に増大させる。
その内心の不安通り、司令官が渡した兵器のデータが偽物であると既に知られているのだろうか、それとも他の何かがあるのか、それを今のアンナースが知る術は無い。
そこにコンスタリオが
「まあ、丁度いいわね。
お互いに同じ目的を持っているようだし、又その作戦に協力させてもらうわ。
司令官にも調査という名目で報告すればお咎めは無いでしょう」
と提案してきたのを聞いてアンナースは
「やはり……こうした展開になってしまったか……でもここで断れば益々疑われる。
それにあの指令書にはコンスタリオ小隊の同行の有無は書いていなかった、なら……」
と内心に生じた不協和を封じ込める様な都合の良い思考を行った後
「では、今回も宜しくお願いします」
と言ってコンスタリオ小隊に同行を求める。
それを聞いたコンスタリオが
「分かったわ、ならここで油を売っていないで早速向かいましょう」
と言ってアンナースに先導するように促す。
その内心では
「これで又……待って……今自分で思って気付いたけど、あの文章には確かに……となると、コンスタリオ小隊の同行も計算した上での指令書だという可能性も……」
と先ほどの自信の出任せに起因する新たな疑念を抱き始めていた。
それもこれは決して気の所為ではない、確かに内心に芽生えた疑念である。
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