第1035話 苛立ちの先に待つ物

「コンスタリオ小隊が私達の敵に……?」

「ええ、それも私達の詳細を知った上でね。

共闘した経験がある以上、彼女達が此方の交戦記録を持っているのは当然の事、此方の手の内を知られた上で戦う事になるのよ。

それも場合によっては魔王達と同時にね」


ここまで言われて司令官も事の深刻さに気付いたのか、漸く顔色が焦った物に変わる。


「それは流石に危険ですね……しかも魔王と一緒とは……ですが何故、コンスタリオ小隊が魔王と共闘してくると言えるのです?」

「彼等は既に魔王と出会っている……にも関わらず魔王と交戦した記録が無いからよ。

例え敵わない実力差があったとしても魔王と遭遇したという記録位は私達と共有するでしょう?

そうでなければ魔王と遭遇した危険地帯に他の部隊が向かってしまう可能性もあるのだから」

「確かに其の通りですが……」

「にも関わらずコンスタリオ小隊が魔王と遭遇したという記録は西大陸の決戦前を堺に記録されていない……コンスタリオ小隊が記録を忘れるとは考えにくいから恣意的に記録を残していない可能性が高いわ」

「それも本人達だけでなく、上官もそれを黙認している、或いは上官が其の作業を行っている可能性もある。

其の点を考慮するとアンナースの一件も……」

「ブエルス防衛部隊の司令官が絡んでいる……そういう事になるのですか……そうだとすると私の指示は……」

「漸く裏目に出たって事に気付いた?全く遅すぎるのよ、気付くのが」


西大陸の司令官、キャベルの司令官、アンナースが交わした会話はアンナースの苛立ちで終わる、そしてそれはコンスタリオ小隊がブントの事を知りつつあるのではないかという疑念を強めつつあった。


「そうなってくると最悪、我々も責任を追求されるでしょうね……いえ、現時点でも既に追求されても可笑しくないかもしれません。

ですが、そう考えると……」

「ええ、未だに処分の伝達が無いのが逆に可笑しいのよ、それどころではない何かが起こっているのか、それとも単に放置されているだけなのか分からないけど……」


アンナースの苛立ちは其の点にも向けられている様だ、すると其の苛立ちに答える……と言う訳では無いだろうが、一同の元に何らかの指令が届けられる。


「これは指令……しかも本部から直接の指令です……」


初めに確認した西大陸の司令官の一声でキャベルの司令官、アンナースの表情も一気に曇った物へと変化する。

恐る恐るその指令を確認するとそこには


「例の地下通路の別ルートより移動し、ポイントの場所に向かえ、そこにある兵器の回収が出来たのであればこれまでの処分は全て不問とする」


と書かれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る