第1034話 アンナースの苛立ち
「つまり、彼等は我々がブントの構成員であるという、少なくとも疑問をいだき始めては居ると言う事ですか……」
「そう考えた方が良いでしょうね……それに、その行動を司令官が見逃しているというのも気になる。
恐らくは司令官が独自の行動を取る権限をコンスタリオ小隊に持たせたのでしょうけど……」
「もし仮にそうだとするならブエルスの司令官は魔王側の……だとするとブエルスが陥落したのも……」
「今更其の事を話しても遅いでしょう、それにブエルス内部の魔王の協力者は司令官だけじゃない、もっと上の方にも潜伏していたのよ」
西大陸の部隊司令官とアンナースがブントの立場から今回の一件について会話を交わし続ける。
どうやらブエルスの司令官が魔王側であるという事に完全には気付いていない様子だ。
「それは分かりましたが……今回の一件についてお二方はどうお思いなのです?
取り合えず兵器の残骸は回収出来たのですからそれを今後の此方の戦略に……」
「組み込むであろう事等奴等にも予想されているわ、何しろ魔神族が出てきたにもかかわらず兵器の残骸を全ては回収していかなかった。
つまり奴等にとって見ればコンスタリオ小隊がこの兵器の事を知ってくれる方がよっぽど都合が良かったって事よ!!」
其の会話に入ろうとするキャベツの部隊司令官に対し、アンナースは珍しく苛立った口調で反論する。
「そ、それはどういう事なのです?」
司令官がたじろいだ様子と声でそう話しかけるとアンナースは
「魔神族が此方に接触してきたにも関わらず残骸を回収しなかったという事は少なからずコンスタリオ小隊の印象に残る行動となるでしょう。
そしてそこから其の兵器に対し疑問を抱いた事でコンスタリオ小隊は此方に兵器の解析データの開示を要求してきた。
作戦に協力してもらったという負い目がある以上、此方がこれを断るのは難しいでしょう。
そして其の兵器のデータ次第では此方の組織の裏側まで暴かれかねないのよ」
と更に苛立った口調で話しかける。
「まあ、それは確かに危険性は感じますが……」
ややのんびりとした口調で話す司令官だが、其の喋り声もアンナースを苛立たせているらしく
「つまり、下手をすれば最も厄介な相手を身近に作り出してしまう可能性があるって事よ。
コンスタリオ小隊がブントの事を知ったら間違いなく彼等を取り込む事等出来なくなる……そうなれば今までやってきたことが全て水の泡よ。
いえ……裏目に出る可能性すら考えられるわ」
と司令官を攻め立てるような口調にも聞こえる風に話す。
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