第1033話 兵器が加速させる葛藤
「うん、そうなると僕達が調べられるエリアは……」
「この城の古い資料辺りになるんじゃない?まだ手付かずになっている部分も一杯あるし」
天之御が自分達が出来る事を告げようとしたその時、部屋の入口から涙名の声が聞こえてくる。
「涙名?何時の間に……」
「偶近くを通りかかったら何か深刻な声が聞こえてきたからね、気になってきてみたらこの状況だったって訳。
序に言うと司令官の話も聞かせてもらったから」
「まあ、彼は君の配下でもあるからね……話が伝わっていても無理はないか……」
天之御の返答に対し涙名は明確にこう返答し、それに対し天之御は少し罰が悪そうな表情を浮かべる。
涙名に対して負い目でも感じているのだろうか?それとも……
「で、どうするの?調べるのなら今から一緒に行くけど……」
「あ、ああ……そうしてもらえると助かるよ」
涙名の問いかけに対する天之御の返答も何処かぎこちない物であった。
やはり司令官との会話が何か影響しているのだろうか?
そんな事を少し考えつつ、星峰と空狐も交えた一同は城の内部にある資料室へと足を運んでいく。
一方、キャベルに置いても兵器の解析は行われていた。
「そうか……やはりあの兵器は……」
「ええ、私達が使っている技術よりも更に前、且つ更に優れた技術で製造されているわ。
今の私達が……いえ、先史遺産の技術さえもあの技術の劣化品としか言い様がない。
それが今になって動き出したとなると、相当お怒りなのか、それとも何か事情があるのか……」
「となると、やはりコンスタリオ小隊に兵器の解析を許したのは痛手になりますね……」
「ええ、この技術の事は当然彼等も直ぐに気付くでしょう。
そして場合によってはそれを公言される可能性も考えられる、そうなった場合、私達の技術的優位は一気に崩壊する事になりかねない」
こうした会話をしているのは西大陸の司令官とアンナースであった。
前回の作戦後に持ち帰った残骸は彼等の方でも解析に掛けられることになったが、作戦協力の報酬としてデータの提供を要求され、完全に横槍であったとはいえ協力を受け入れた以上はその要求を飲まざるを得なかったのだ。
「データの共有は必要ですが、コンスタリオ小隊がそれを報酬として要求してくるとは……偶然とは本当に厄介ですね」
「……これが偶然だと思う?」
「そうした言葉が出てくると言う事はつまり、コンスタリオ小隊があのタイミングであの場に現れたのは偶然ではないと?」
「そう考える方が合点が行くわ」
司令官との会話からコンスタリオ小隊が意図して現れたという事にアンナースは気付いている様だ。
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