第1011話 進言の先に

「今回兵器が起動したのはここ東大陸であり、大陸内部の調査は我々が元々受け持っていました。

そうであるならば我々の調査の延長線上で対応する方が元々手順も分かっていますし、宜しいかと思うのです」

「しかし、それだと時間だけでなく危険性もかなり高まってしまうけど……」


理由を説明する豊雲だが、天之御はそれには納得していないのか尚も困惑した口調で食い下がる。


「無論、殿下達のお力を信頼していないという訳ではなく、其の信頼にお答えしたいと思っています。

ですが私には今回の兵器の襲撃が単なる襲撃ではなく、何か大きな災いの予兆なのではないか……そう思えてならないのです」

「其の災に備えるためにも私達には待機していて欲しい……そういう事なの?」


更に天之御に対し説得を続ける豊雲に対し、星峰はこう言葉を付け足す。

其の返答を受けた豊雲は首を縦に振って頷き、其の言葉が正しい事を暗に示す。


「……分かった、それについては任せるよ、但し、決して無理はしないで。

もし何かあったら迷わず僕達に連絡してきて」


豊雲に対し、天之御はそう告げてモニター越しに顔を見合わせる。

とりあえず納得はした様だが、その表情には明らかに心配の色が浮かんでいた。

それは周囲の面々も気付いていた、否、同じであった。

天之御程明らかではないものの、周囲の面々も豊雲について心配しているのはその表情と場の空気が示していた。


「ありがとうございます、それでは早速調査に移ります」


豊雲はそう告げると通信を切り、モニターが切れた謁見の間で他の面々は顔を見合わせる。


「豊雲の覚悟は分かったけど、もし今回の動きがブントではなく、奴の行動であるとするなら其の危険性は押して知るべきだろうね……」

「うん、だけどそうであるならが奴が直接動かなければならない位の状況にまでこの世界の状況は動かせたって言う事になる。

其の点は喜ぶべきなのかも知れないね」


涙名と天之御が告げた言葉により、この状況は彼等が部分的には望んでいる物である事が明らかであった。

そして彼等が奴と呼ぶ存在、それが何者なのかは分からないが、一同の顔は其の言葉を発した瞬間にこれまで見た事の無い険しさを浮かべていた。

其の険しさはブントの面々に向けた表情のそれを遥かに上回っていた、それ程一同が警戒しているのだろう。


「そうであるならば豊雲の言う災いというのも外れでは無いのかも知れない、何か此方から打って出る方法があれば良いのだけど……」


岬がそう呟くと他の面々の表情の険しさは更に増していく、それ程難しい話なのだろう。

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