第1010話 豊雲の進言

「そうかもしれないね、あるいは一番楽な所に行く事が出来たが故なのかもしれない」


天之御は星峰の皮肉った喋りに対してこう返し、其の返しを受け取った星峰はやれやれと行った表情を見せる。

天之御には敵わないと判断したのだろうか。


「話している所悪いけど、岬と八咫の戦いが終わったみたいだよ」


涙名がそう告げるのと同時に天之御と星峰は視線を謁見の間のモニターに向ける。

するとそこでは確かに岬と八咫が兵器を全て倒したという事が確認出来た。

モニターに写っていた熱源反応が消滅していたのだ。


「なら帰りの足を用意してあげないとね」


天之御はそう告げると二人の向かった先に転移妖術の紋章を出現させる。


「空狐はまだなのね……若干手古摺っている様だけど、そこだけ他と違う兵器が送り込まれているのかしら?」

「大丈夫だとは思うけど、万が一の自体に備えておく?」

「それは今話す事じゃないよ、それに……そう考えたり、口に出したりするとそれが現実になってしまいそうな、そんな不安もある」


星峰の一言でモニターに目をやるとそこで確かに未だ空狐が交戦を続けている事が確認出来る。

それを確認した涙名がそう告げると天之御はそれを振り払う様にこう告げる。

その表情には明らかに不安が浮かんでいた事を星峰は見逃さなかった。

それから少しして空狐の向かった先の反応も全て消え、それを確認した天之御は転移妖術を使用する。


~回想終わり~


「これが僕の向かったエリアの戦いだよ」


天之御がそう告げると空狐は


「殿下の向かった先が最も兵器の数が多かった……という事はそこに存在していた兵器は何らかの理由でそれだけを配備する必要があった、そういうことになるのでしょうか?」


と兵器の数に関する疑問を口にし、それに続けて涙名は


「其の可能性は高いと思う、それに加えて増援まであったとなると、其の兵器が向かって行こうとした先は兵器の製造者にとって何か見られたくないものがあるのか、或いはそう見せかける為の陽動か……

いずれにしてもそちらについても調べてみる必要があると思う」


と言葉を続け、天之御にさらなる調査の対象が増えた事を明かす。


「今のお話を聞いて思ったのですが、其の調査については私達の部隊に一任して頂けないでしょうか?」

「!?どういうつもりなの?」


其の話を聞いた豊雲が唐突にこう告げると天之御は少し困惑した様子でその真意を問いかける。

どうやら今の発言は天之御にとって予想外であったらしく、何時もの冷静さが少しばかり損なわれていた。

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