第993話 静寂の世界

「此方側の技術面での優位性も揺らぐ事になりかねないか……コンスタリオ小隊をいずれ取り込む為に此方が唾をつけておいたがそれが仇になるとは……」

「ええ、少なくとも今回は其の点を認めざるを得ませんね……此方に対し疑念を抱いた結果、繋がりを逆に此方の捜索に利用される形となりました」

「手に落ちた兵器をアンナース達に処分させようにも現時点で動けば寧ろ疑いの目を更に向けられる結果となるでしょう。

こうなると此方に危害が及ぶのも時間の問題です」

「エアロタウンの連中め……肝心要の場所で始末をしくじりおって……

奴等が独自の高い戦力を抱けたのは我等の存在あってこそだという事を忘れおったのか!!」


其の場に集っているブントの幹部らしき生命は口々に不満や懸念を口にするものの、それらから建設的な意見が出る事は無く寧ろはけ口を求めているだけのようにも映る。


「それに魔王にも今回動きが見られた、此方側の兵士に対し処分を下している。

エアロタウンが此方の指示通りに動かなかった結果、魔神族側の我々も動き辛くなった、これでは魔王は更に活発に動いてくるだろう」

「ええ、それに司令官と指揮官には重罰も下されている……恐らくはもう我々の下に戻すつもりはないのでしょう、であれば……」

「待て……そうやって暗殺者を送り込んで失敗しているのをもう忘れたのか?一度阻止されている以上暗殺者を送り込む事は最早意味を成すまい……

それよりもまずは此方の体制を立て直す事が先決だ」

「なるほど……それもそうですね、では、今回の一件で失った戦力の補充を最優先とすることにしましょう」


魔王の動きに話の焦点が映った事により、多少は建設的な意見が出てきた様にも見える、だがそれは明らかに邪な建設であった。

それから数日が経過するが、どの組織、軍隊も目立った動きは見せていない、その間世界は静寂を保っていたが、殆の、少なくとも天之御達とコンスタリオ小隊にとってはそれは嵐の前の静けさにしかならなかった。

否、寧ろ彼等が嵐を巻き起こすのかも知れない、そう思わせるように


「隊長、例の兵器のデータ解析は進んでいるんですか?」


とコンスタリオに質問するシレットの声が響いた。

それに対しコンスタリオは


「ええ、あの兵器はこれまで私達が調べてきた先史遺産の技術をベースにしつつ、それらを更に発展させた技術で建造されているわ。

故に高い戦闘能力を保ちつつも量産化を可能にしてる、もしこれが開戦当初から全ての軍隊に配備されていたら戦乱はあっという間に終わったでしょうね」


とサラッとではあるものの、極めて恐ろしい発言を口にする。

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