第992話 ブントの焦り

其の直後、天之御の手元の端末に次々と今回の一件で追求されている兵士から返答の文章が届いてくる。

だが以外にも其の中で今回の処分を不服としたり異を唱えたりする文章は一つも見当たらなかった。


「反論や異論は無し……か、傷口をこれ以上広げない為の策なのか、それとも保身に走ったが故の行動なのか、或いはこれも又ブントの罠か……何れにしても処分に反論する兵士がいないというのは好都合だね。

このまま処分を追求するとしよう」


天之御はそう呟くと送られてきた返信に対し、記載されている処分をそのまま履行する事を記した文章を返信する。

だがその文章についてもやはり納得した者ばかりではなかったようだ、その文章が送られたのと時を同じくして


「くっ!!この文章で処罰が決定的になってしまった!!」


と大声で怒鳴り散らす何者かの声が某所に置いて響いていた。


「仕方あるまい……魔王にしてみれば只でさえ配下の無断出撃という処分を下すには十分な名目があったのだ、それを利用するというのは我等とてその状況であれば考えられただろう」

「それはそうかも知れませんが、この一件で我々の部隊の一部は謹慎を余儀なくされ、貴重な指揮官、司令官も魔王の手に落ちました。

これでは今後の作戦行動に大幅な修正、変更を加えなければならないのは避けられません」


最初に怒鳴り声を響かせた生命の他にも複数の生命の声が其の部屋には響いている。

其の内容から考えてその生命がブントの構成員である事は明白であった。


「そもそもエアロタウンへの出撃はあの施設を抑えると同時にコンスタリオ小隊を此方に引き込む為の準備も行う為の物だった、だが事もあろうにコンスタリオ小隊に此方が用いていた兵器を使われ、作戦が台無しになるというとんでもない事態となった。

つまり、コンスタリオ小隊が我々の存在に気付き始めているということだ、ある意味ではそれが一番の問題にもなる」

「確かに……それが一番の問題かも知れませんね。

お目付け役としてアンナースを送り込んでいたにも関わらずこの様な事態を招いた以上、コンスタリオ小隊についての警戒も今後強めていく必要があるでしょうし」

「もしコンスタリオ小隊が我々の存在に気付くような事があれば……」

「決まっている、直ちに排除する必要があるだろう。

最も、あの兵器を抑えられたというのはかなり厄介な話になるだろう、万が一あれが魔王の手元に届くようなことになれば……」


ブントの会話は徐々に焦りが見えているようにも思える。

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