第991話 それぞれの心境

その後、一同は地下から一階へと上がり、それぞれの部屋へと戻っていく。

涙名は部屋に戻ると


「この地下に作られていた拷問室がこんな形で僕たちの役に立つとはね……それに空狐の血族が使用していたあの部屋と類似性があったって事は何らかの形でぶんとの技術がやり取りされていたって事になる。

この線から調べれば何か掴めるかも知れない」


そう口にすると部屋の端末を起動し、其の端末を用いてデータベースへのアクセスを開始する。

一方其の空狐はと言うと


「私の血族とブエルスの法皇が類似した拷問室を使っていた……ブントは拷問の技術にも長けていたという事なの?

そして隊長さんは自らの血族と向き合おうとしている……私も腹を括る必要があるわね」


と端末を起動こそしないものの、涙名と同じ疑問を内心に抱いていた。

其の頃星峰は


「隊長の血族がエアロタウンの上層部であるとするなら魔神族の侵攻を指示したのも恐らくは其の血族か、或いは其の関係者……だけど隊長は自分の家族は魔神族の侵攻で犠牲になったと言っていた。

もし其の犠牲になったのも又ブントの策略なのだとしたら、ブントは最初から隊長を自らの戦力として取り込むつもりだったの?」


とコンスタリオの血族にブントの関係者が居たという事実の意味を改めて考えていた。

だが最初に浮かんだ其の考えとは裏腹の


「或いはブントに対抗する側の部隊がブントを殲滅する為にその過程で隊長の血族を手に掛けたという線もあるわね。

様々な可能性が考えられる以上、どういう風に隊長が行動するか……其の点に中止する必要がある」


という考えも又浮かんでいた。

最後に部屋に戻った天之御は


「ブント側の兵士に対して処分と責任追及を行うには今回の一件は十分な材料になる、それ故にきっちり使用する。

だけど恐らくはそのままおとなしく従ってくれるとは思えない、何らかの抵抗も示してくるだろう。

となると其の抵抗を予想して……」


そう呟きながら其の処分を記載した文章を作成し、それを完成させると今回の侵攻に参加した部隊に対して送信する。

そのまま数分時間が流れるが、特に返答等が帰ってくる事は無い。


「兵士に動きが見られないか……おとなしく罰を受けるという意思表示なのか、それとも何らかの抵抗の手段を隠しているのか……」


兵士の動きを推測し、更に暫く画面の前に座り続ける天之御、だがそれに対しても特に動きは見られない。


「今は下手に動かない方が得策と考えているのかも知れないな……」


兵士の心境を考えて更に待機する事を決める。

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