第950話 何処か冷めた何か
「ええ、シレットの様に直接進行された訳ではないから滅茶苦茶というのとは又違うのかもしれない。
だけど、其の欲望がこのタウンを、ひいては私や私の一族の内心を歪ませたのであればそれは……」
「もう滅茶苦茶という言葉では収まりきらない程に怒りを抱いている……ですか」
シレットが察していたのはコンスタリオの言いたいことだけでなく、その内心でもあったようだ、其の直後に出てきたこの言葉がそれを裏付けている。
「それは分かったけどよ……俺達は一体何処に向かっているんだ?
幾ら故郷とはいえ、流石に行き当たりばったりでウロウロしてるって訳じゃねえとは思いたいけどよ……」
「そうね、行き先を告げずにウロウロするのは流石に不安になるわね、今から向かっている所は私の家よ、最も、今はもう誰も住んでは居ないのだけど」
少し不安げな言葉を思わず口にしたモイスに対し、コンスタリオはこう返答する。
其の返答に驚いたのか、モイスは
「今はもう誰も住んでいないって……どういう事だよ?」
と通常であれば思わず傷口を抉ってしまいかねない発言を口にする、だがコンスタリオは
「私の一族はこの戦乱に置いて度々他の大陸やタウンに凱旋していたもの、私も含めてね。
そしてそれ故にタウンに在住していない時間も多いの」
と平然と返してくる。
其の口調から実は内心には傷を追っていると言った様子も見られない。
その発言に対し、思わず傷口を刳りかねないと思える発言をしたモイスも
「……何だ?隊長の発言になにか違和感を……」
と明確には出来ないもののコンスタリオの言動に何かこれまでとは違う物を感じ、同時に不安にもなる。
そこにシレットが
「それだけ優秀な能力の持ち主ということなのですか……」
「さあ……私の印象だとそこまででも無い気もするけど、それよりも厄介者を遠ざけたかったのかもしれないもの」
と話しかけてもそれに対する返答も又何処か冷めた印象であった。
少なくともこれから実家に帰ろうという様な雰囲気ではない、無論これが少なくとも形式上は任務であるという事も関係している可能性はあるが、シレットとモイスが感じている違和感はそれだけでは到底説明出来ない何かが其の奥深くに沈んでいる、そう思えてならなかった。
「ついたわ、此処が目的地よ」
コンスタリオはそう告げてシレットとモイスの足を止めさせ、目的についた事を告げる。
そして其の周囲を見渡したシレットとモイスは
「え!?これは……」
と、何処か信じられないという表情を浮かべる。
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