第941話 夢に差し込む光

その生命は襲撃部隊を退けると近くに居たこの生命を含む数名の生命に近付く。

生命達は怯え、近づいてくるその生命に対しただ足を竦ませ、動けなくなっているだけであり、最早逃げ出す事すらもままならない。


「この感じ……この子達は怯えているんだ……」


涙名がそう口にしたのは只単にその場を見ているからではない、実際に自身の中にも怯えの感情が少なからずある事が感じられたからだ。

恐らくはこの夢を見せている生命がこの時実際に感じていた恐怖、怯えの感情なのだろう。

そう思うのにこの夢、この状況は十分過ぎる程の影響があった。

近づいてきた生命は何かを数名の生命に話しかけているようだが、その内容を聞く事は出来ない、いや、正確には最早聞ける状態では無い。

それを証明するかのように今、この場面を見ている涙名の耳にも全くその生命の言葉は聞こえてこない。

只、ぼやけている輪郭の口部分が動いているのが辛うじて分かるのみであり、言葉で話しかけられているという事だけは状況から理解出来るだけである。

そのまま意識を失ってしまったのか、その風景はそこで黒一色に染まる。


「今の生命が仮にブントの勧誘員であるなら、この子は此処でブントに連れて行かれた事になる。

やはり、この襲撃も……」


この夢を見た涙名は星峰が立てた一連のブントについての仮設が正しいのではないかという考えを更に強める。

そして黒一色となったその光景に再び色が灯った時、そこは明らかに何処かの施設と言える白に近い灰色で埋め尽くされた光景が広がっていた。

その生命が周囲を見渡すと同じく白に近い灰色で埋め尽くされた一面の壁が広がっており、その直ぐ側には職員らしき生命が佇んでいた。


「あら?漸くお目覚めなの……」


その生命のその声をその夢は終わりを告げ、部屋の窓には朝日が差し込んでいた。

一方その頃、前日星峰からメッセージが送られていたコンスタリオは既に起床し、そのメッセージを読み上げていた。


「これは……早朝から騒々しいけど、シレットとモイスにも伝えないと」


そう内心で思ったコンスタリオはシレットとモイスの部屋に向かい、二人に自分の部屋に来る様に伝える、勿論スターからのメッセージが来たという事実は伝えた上で。


「スターからまたメッセージが来たんですね……今回は一体どんなメッセージが……」


部屋に着くや否やシレットは早速本題に入っていく。


「今から読み上げるけど、今回のメッセージは下手をすればもう引き返せなくなるかもしれないわよ」


コンスタリオはシレットのその内心を察しつつも何処か釘を指す様な口調でこういう。

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