第940話 夢の続き
そして星峰の部屋を後にし、そのまま自室へと戻った涙名はそのまま床に入り、ゆっくりと目を閉じていく。
「君の夢を……今日も見られるかな……」
自身の体となっている生命の夢を見られる事を微かに期待した上で。
「はあっ……はあっ……」
ふと気がつくと涙名は昨夜の夢と同じ光景を見ていた。
「此処は……どうやら希望が通じたみたいだね……」
周囲の光景を目にし、涙名はこう呟く。
その側を昨日の生命が走り去っていくのも又、涙名の内心の思いを強くさせる。
「それにしても……この光景は明らかに襲撃されている、やはりブント側の部隊が仕掛けてきているんだろうけど、この様子だとこの街はもう……」
激しく燃える街、生命の心境を考え、涙名は心苦しさを感じつつも夢の中では何かが出来る訳でもない、ただ怒りを抱くことしか出来ない事にもどかしさを感じていた。
「だけど……せめて彼等の事は知らなければね!!」
そう大声で叫ぶと涙名は先程側を通り過ぎていった生命の後を追跡していく。
彼等の後を追う事だけが今自分が出来る唯一のことである、そう考えたからだ。
そして彼等の後を追っていくが、何かから逃げていると思われる彼等の前に無情にも新たな襲撃部隊と思わしき兵士と兵器がその姿を表す。
その兵士と兵器を見た涙名は思わず
「あっ!!」
と声を上げてしまう。
その部隊は紛れもなくブエルス防衛部隊の兵器と兵士だったからだ。
「あの服と兵器に刻まれている紋章……間違いなくブエルスの部隊の物だ……そして、もしそうであるとするならこの襲撃を目論んだのは……」
涙名はそう口にすると思わず唇を噛み締め、その表情が暗く重い物に変わっていく。
襲撃を目論んだ者の小隊は略見当がついたが、それ故に怒りを感じずには居られなかった。
そして、その襲撃部隊が今にも生命達に襲いかかろうとしたその時、突如として生命達の背後から何者かが現れ、襲撃部隊の兵器が攻撃態勢を取るその前に手にした短剣で兵器を切りつけて破壊する。
その何者かはそのまま短剣を自由自在に使いこなし、その場に居た兵士や兵器を次々と切り裂いていく。
「あの生命……輪郭がはっきりと見えないね……この子の記憶が曖昧なのか、それともショックを受けているが故なのか……」
その何者かを目撃した涙名がそう告げる。
目がぼやけているのではない、実際に涙名にはその生命は輪郭がはっきりと見えず、蜃気楼の中に居るように見えていた。
恐らくはこの時、この生命の目には実際にこう見えていたのだろう。
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