第927話 踏みにじられる純粋
「つまり、涙名は昨日見た夢が只の夢ではなく、その体の持ち主であった生命が伝えたい何かのメッセージを含んでいるのではないか、そう言いたいんだね」
「うん、あくまで推測……いや、勘でしか無いけど、このタイミングで全く見に覚えのない夢を見た事が偶然とは思えないんだ」
涙名の真意を推し量った天之御がこう告げると涙名はそれに同意し、自身の言いたいことが伝わった様子に胸を少し撫で下ろす。
やはりこの話を聞いてもらえるかどうかという不安はあった様だ。
それ程今回の話は傍から聞いていると滑稽な印象しか受けない。
「確かにその可能性もあるけど、仮にそうだとしてもその街が何処なのか特定しない事にはそのメッセージも推測のしようがないわね……
せめて何処の街なのか手掛かりになりそうな物を写してくれていれば……」
岬がそう呟くと星峰は
「確かにその夢だけでその街を特定するのは不可能ね……となると、残る線として言えるのは、その生命の年令から逆算してその時期に行われたであろうブントの作戦行動から特定するという形ね。
けど、それにしてもその生命が何歳位の時にそれが行われたのかが分からない事には正確な特定は難しいわ。
ある程度までであれば絞り込めるけど」
と言葉を続ける。
「ある程度までって……どうやって?」
「その生命を戦力として取り込んだのであればまだ物心はついていない時期に取り込んだ可能性が高いわ。
そうしないと余計な疑問を抱かれかねないもの」
空狐が告げた疑問に対する星峰の解答、それは洗脳するのであれば早い方が良いと言う事を単に示していた。
そしてそれに
「そうだね、確かに幼少期であれば純粋な気持ちに付け込んで洗脳し、従順な兵士に仕立て上げる事は容易に出来る。
そしてブントがそれを考えつかない筈がない……いや、星峰も嘗てはそうだったからこそその結論に至ったんじゃないか」
天之御がこう続け、星峰はそれに対し首を縦に振る。
どうやらそれが事実の様だ。
「その子の見た目は大体私達と同じ位だから、その子の幼児期にあたるであろう年代のブントの行動を調べればある程度までは特定出来るかも知れないわ、と言っても直ぐに……という訳にはいかないけど」
「時間がかかってもいいから星峰、調べて欲しい。
このタイミングでこの子がもし何らかのメッセージを送ってきたのであればそれは暗殺部隊に関わる事かもしれない」
涙名の頼み事に対し、星峰は頷いて了承する。
それは双方の信頼もあっての事なのだろう。
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