第926話 歪められる血筋
「妖術の独特さが戦力として取り込むには裏目に出たって訳か……だけどそんな美味しい話をあの権力欲に取り憑かれていた連中がみすみす逃すとは思えねえな」
空狐の解答を疑う訳ではないが、その血族の裏側を交戦したが故に知っている八咫はこう口にし、他の面々も口にこそ出さないものの同じ思いを内心に持っていた。
それを察したのか空狐は
「ええ、実際八咫の言う通り、彼奴等がそんな出世街道をみすみす逃す筈は無かったわ。
そこで奴等が考えたのが人造生命に自分達の血筋を混ぜ込む事、そうやって妖術を使える様にすれば何体でも量産出来る、そう考えたのよ。
あの連中が残したデータにその記録もあったし、間違いなくその計画は存在していたわ」
と血族がこの話を逃そうとしていなかった事を告げる。
「そんなことまで考えていたとはね……人造生命の技術自体は既にブントの技術が確立されていた、其処に自分達の血筋を混ぜ込んで……もし実行されていたらとんでもない事になっていたね……いや、もしかしたら同じ様な考えはまだうごめいているかも知れない」
天之御がそう不安な口調で告げる、それは他の面々も承知していた。
人造生命に自分達の血筋を混ぜ込み、能力を使える生命を自在に作り出そうとする等権力欲に取り憑かれた生命が如何にも考えそうな事であるからである。
「それを根絶するとなると人造生命の技術そのものを破壊しない限り略不可能だ……となると、現状でそれを行うのは現実的ではないね。
故に今はブントを監視し、下手な動きをさせない事が重要になる」
天之御はこう言葉を続け、今回の一件で人造生命がどれだけの問題を引き起こすかということについて改めて考えさせられる。
「一方でブントは勢力の拡大を目論んで自作自演の襲撃を行ったりもしてる。
流石に最近は行っていないようだけど、もしそれが行っていないのではなく、その必要が無くなった為であったら……その理由は不穏な物しか考えられないわ」
空狐がそう続けると一同の顔に不安が映る、それはブントのこれまでの行動から考えても明らかであった。
「だとしたら、やっぱり昨日の夢はこの子の内心に刻まれた記憶だったのかな……」
此処で涙名はこう話を切り出し、昨日の夢の話題を遂に話し始める。
「夢?一体どういう……」
星峰が疑問を投げかけると涙名は昨日見た夢の話、そしてそれが自身の体となっている生命の記憶に関連しているのではないかという仮説を話し始める。
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