第915話 無知という咎

「これ程の酷いノイズが……確かにこれは作為的な妨害の意図がなければこんな事になるはずがないわね。

だけど、私達が使用している無線端末は正常に機能しているわ」

「軍で支給されている無線端末はある程度拡張性を持たせてはいるけど、この無線機にも何か独自の変更点を加えたの?」


星峰がノイズを分析し、岬が兵士に問いかける、だが兵士は


「いえ……この無線機は上官より支給された物をそのまま使っているだけですので私には何とも……」


と名言を避ける様な発言をする。

だがその様子からして名言を避けているのではなく、本当に知らないのだろう。

恐らくその上官というのがブントの上官であるという事も天之御達には検討はついていた。

それを察したのか


「ありがとう、とにかく僕達は散開して兵器の掃討にあたる、この街の部隊には住民の敬語と避難を最優先して欲しい所だけど、それをどうやって伝えるか……」

「これ程のノイズが撒き散らされているとなると、恐らくは司令室の通信設備も同様でしょうね。

いえ、寧ろ司令室の通信設備が機能していない事がこの状況を引き起こしていると考えた方が良いのかも知れない」

「だとするとこの状況で全体に指示を出すには……大声でも上げて響かせるしか無いかな」


天之御はそう言うと飛翔し、街の中心部分へと移動する。

そして


「魔王妖術……褐色の叫び!!」


と言うと口からその名の通り大きな叫び声を上げ、それを街全体に響かせる。

だがそれは只の叫び声ではない、その叫び声が頭の中を通った瞬間に天之御の意図がその内心に浸透する様に伝わってくる。


「これは……天之御の本心が私の心に入ってくるというの……」


星峰は初めて受けたのか、少し困惑した表情を浮かべる。

一方他の面々はそれに対して特に反応を示していない為、以前にも受けた事があるのだろう。

その叫びは街の中に居た兵士達にも伝わり、一同と兵士はその意図に沿う形で行動を開始する。

兵士達は本来ブント側である筈だが、この状況で天之御に対して叛意を見せる様な事はしない。

それだけ今回の一件が想定外であったということなのか、それともこの状況で叛意等見せればブント側だと発覚してしまうのを恐れての行動なのかは分からないが。

そして一同が街の方方に散開したのを確認すると天之御は地上に降り立ち


「さて、僕も役目を果たさないと行けないね」


と呟いて自らも何処かへと向かっていく、その行く先は司令部……ではなく他の面々と同じく戦場であった。

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