第910話 星峰の思惑

「ええ、此方の想定通り、例の最も危険と思われるエリアにコンスタリオ小隊を派兵してもらったわ。

何しろあのエリアは既にブントが手を出していたからね……それも今の戦争が始まる前から」

「うん、先代の魔王である父が残してくれた資料の記述からそれは既に分かっていた。

ただ、それが何処にあるのかまでは父も完全に特定出来て居なかった、それ故にこの県に関しては対処が後手に回ってしまった部分がある」

「その資料の穴を埋めてくれたのが先日星峰が発見してくれたデータだった、だけど場所が場所なだけに直接向かうのはリスクが有りすぎる。

それに他の場所も調べる必要がある、そこで今回の動きだ。

これで少なくともブントが軽々しくあのエリアに手を出す事は無くなったと思うけど」


星峰、天之御、涙名がそれぞれに今回の一件について話し、其処に


「それに連中がコンスタリオ小隊を取り込むハードルもかなり高くなったのではないでしょうか?

今回の一件でブントが嘗てあのエリアを発掘していた事がコンスタリオ小隊の知る所となった訳ですから」


と空狐も言葉を続ける。


「其の点も踏まえての今回の作戦よ。

空狐の言う通り、コンスタリオ小隊が今回の一件であのエリアの危険性を把握してくれたのはまず間違いないと思う。

只、一つだけ此方の想定外の事態が起こっているの、司令官の報告内容からね……」


そう語る星峰の言葉は徐々に音程が低くなり、其の想定外の事態が喜ばしくない話である事を想像させる。

最も、想定外の事態など大半は良くない話なのだが。


「想定外の事態……それって?」


岬が恐る恐る星峰に問いかけると星峰は


「其のエリアでコンスタリオ小隊が遺跡の防衛用と思われる兵器と交戦したという事なの。

それも入口付近に突然現れた兵器にね」


と告げる。

それを聞いた八咫が


「入口付近に突然現れた兵器と交戦?って事はつまり、其の兵器は……」


と驚いた声を上げると天之御は


「防衛用の兵器がそんな入口付近まで自動巡回しているとは考えにくい。

となると考えられる線はコンスタリオ小隊の一部始終を監視している存在が何処かにいるか、それとも兵器に転移機能が備え付けられているのか、この何方かというのが妥当な線ではあるね」


と仮説を述べる。

その仮設に対し星峰は


「私も司令官も天之御と同意見よ、そして更に行ってしまえば、其の二つの中でより可能性が高いと言えるのは後者の転移機能ね。

もし前者だとするなら其奴は一体何者なのか、其の点まで出てくる事になるもの」


と言葉を続ける。

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