第911話 深まる内部抗争の果てに

「転移機能を搭載した兵器は既に他の先史遺産の遺跡で確認されているんだ、コンスタリオ小隊が調べてくれたその遺跡にもそうした兵器が確認されても不思議は無いな。

只、そうだとすると厄介なのは……」

「ええ、既にそれが起動していると言う点ね。

今は入口付近まで出撃しているだけなのでしょうけど、もし万が一外に出てくる様な事になれば人族と魔神族の衝突以上に厄介な事になる可能性もある」


八咫と岬もそう私見を述べ、先史遺産の兵器に対し警戒心を強める。


「司令官もその点を危惧しているわ、故に人族側でも今後そのエリアを含めた監視を強化し、防衛戦力を展開出来る様にはしておくという事だけど……」

「そこに対してブントが横槍を入れてくる可能性は十分考えられる……って事?」

「ええ、その点は考慮しておく必要があるわね。

文都内の派閥抗争も激化しているようだし」

「東大陸と西大陸が陥落した事で責任の擦り付け合いをしてるって話は僕の耳にも入っているよ。

北大陸は魔神族側に多く入り込んでいるし南はその逆、大陸内の構図がそのまま当てはまってる。

故に東と西の派閥は何方に取り入るかを考えているってところだろうね」


天之御と星峰が語るブント内部の抗争の様子に他の一同は呆れている様な、警戒しているような、そうした表情を浮かべる。


「こんな時にまで保身と内部抗争、権力争いに明け暮れるなんて……本当、こいつらにこれ以上世界を好きにさせる訳には行かないわね」


嘗て自身の一族もそれに加担していたが故か、空狐が強い口調でそう言い切る。


「で、豊雲、東大陸の調査の方はどうなっているの?

あれから何事もなければそれで良いのだけど……」

「残念と言いますか、朗報といいますか、今回の一斉調査で進展はありましたよ」


天之御が唐突に豊雲に話を振ると豊雲は嬉しいとも残念ともどっちともつかない様な口調と声でそう話す。


「進展があった?具体的には?」

「今回の一斉調査で調べてみたのですが、以前から疑いがあったとおり、東大陸の先史遺産は大陸全土に点在しているのではなく、大陸内部に一つの先史遺産の遺跡として存在しているという事が分かりました。

そして恐らくは地上でも地下でも行き来していたものと考えられます」


天之御が更に豊雲に話すように促すと豊雲はこう返答し、予てから考えられていた疑問が事実であったという事を改めてその口、言葉で説明する。


「あの地下通路も線路もその為の物だったって訳だね」


天之御は何処か納得した表情を浮かべる。

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