第906話 拡大する疑念

「そうね……私が考える司令官への疑念、それは司令官が今回の一件で現地が既に発掘されているのを既に承知して居たのではないかという事よ」

「えっ……つまり、司令官は……」

「魔王側と同じ考えを持っているって事か……其の予測が当たっていれば」


コンスタリオの立てた仮説は司令官が魔王と繋がっている可能性すら考えさせる飛躍したものであった。

だが他の二人もそれを否定はしない、いや出来ない。

少なくとも可能性としては十分考えられたからだ。


「なら、私達をあそこに向かわせた本当の理由は……」

「スターの言っていた裏側にあの発掘地帯をこれ以上調べさせない為なのかも知れないわね。

私達が先に行って其の危険性を把握した以上、司令官はそれを口実に監視を行うか、或いは……」

「裏側の息がかかっていない部隊を駐留させるか、其の辺りの行動を取るかも知れねえって事か。

だったら当然、その中の部隊には俺達も含まれるって考えといた方がいいだろうな」

「えっ!?どういう事……私達も含まれるって……」

「モイスの言うとおりだと思うわ。

現地の事情を多少なりとも知っている人物が部隊内に居た方が調査はやりやすくなるもの。

そして、その部隊が編成されるのもそう遠くはないでしょうね」

「既に司令官がそれを進言するには十分過ぎる情報が集まっているから……ですか」


シレット、モイス、コンスタリオがそれぞれ口々に疑念についての意見を出し合い、其の上で今後どうするかについて更に話を進めていこうとする。


「だとすると、他のエリアも大体同じ様な状況になっているのでしょうか?

司令官は遺跡が発掘されている、或いは少なくとも其の痕跡がある場所が今回調査した大半だと言っていましたが……」

「仮にそうであるとするなら今回出撃した部隊は其の大半が裏側の息のかかっていない部隊という事になるでしょうね。

裏側の部隊が混ざっていたら恐らくその部隊は虚偽の報告をしてくるでしょうから」

「それだと裏側の部隊を炙り出す為に敢えてその部隊を出撃させたって線も無くは無いと思うが、それはそれでいいのか」


疑念は更に拡大し、司令官の編成した部隊そのものについても向けられていく。


「もし仮にそうだとするなら、其の裏側の部隊はその新言に対して何か文句をつけてくるのでは?」

「或いはそれすらも裏側を炙り出す為の仕掛けなのか……」

「其の辺りは司令官に上手くやってもらうしか無いわね、それよりも今考えるべきことは……」

「スターの示してくれた地域の内、今回の調査で何処が調査されたのかを照合する、これがベストだと思います」


更に拡大する疑念をコンスタリオ小隊は一旦脇に置き、スターのデータとの照合をシレットは提案する。

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