第904話 スターの齎す幸福

「それで司令官、他のエリアについてはどうだったのですか?」


此処でコンスタリオは敢えて他のエリアについて話を振る。


「他のエリアも大体同じ様な報告だった、ただ、それらのエリアにおいて兵器と交戦したという報告は無かったが」

「大体同じという事はつまり、他のエリアに置いても先史遺産の存在が確認できたという事ですか?」

「具体的に確認出来た箇所は無いが、それらしき物があった、或いはそれを創作したと思われる存在が居たということについてはほぼ全ての箇所から報告が上がっている。

南大陸だけで未確認の先史遺産の痕跡がこれだけ発見されたとなると、今回スターがコンスタリオに送ってきたと言うデータはやはり先史遺産の場所を示していると考えてまず間違いないだろう」

「そして、今回の魔神族の動きについてもそれは同様である……と?」


司令官がそう話を纏めようとするとコンスタリオは其処に魔神族の動きについての疑念を付け加える。


「恐らくはな……何故魔神族がここに来て先史遺産の捜索を初めたのかについては不明だが、今後の其の動きについては注視する必要があるだろう」

「ええ、今回スターが提供してくれた情報を元に、南大陸の警備を強化すると同時に場合によっては此方から他の大陸の奪還に動く必要もありますね」

「ああ、だが今それをするだけの戦力的余裕は無い、現状では南大陸の防衛戦力増強が再優先事項だ。

だから君達も今は休息を取って欲しい」


司令官がコンスタリオ小隊にそう告げるとコンスタリオは


「分かりました、ではそうさせて頂きます」


と告げて司令室を後にする。

それを確認したブエルス防衛部隊の司令官は


「ここまでは殿下達の想定通りか……全く、気心の知れた仲とはいえ彼等の行動をここまで予測するとは……相変わらず鋭く恐ろしい奴だ、スター……いや、今は星峰だったか。

しかし、ここに来て先史遺産の驚異が再燃するとは……これがブントに逆転の手立てを与えるという事はあってはならない。

そうならない為に、私も出来る限りの事をしなければな」


と一人呟きつつ、その内心で何か強い決意を固めるのであった。

一方、司令室を後にしたコンスタリオ小隊も移動を終え、コンスタリオの自室へと集まっていた。

司令官には休息を取るように進められたものの、とてもそんな事が出来る様な気持ちではなかったからだ。


「スターの情報が各大陸の先史遺産に関わっている情報であったとなると、此処で魔神族が動き出したのは……」


そう口火を切ったのはシレットであった。

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