第889話 それぞれの重圧

「彼女達か……しかしそれは……」

「リスクが有るのは承知の上よ、だけどこの状況、問題の施設を放置しておく事はそれ以上のリスクになり得る。

それに彼女達であればその施設を利用しようとは考えないでしょう……」


八咫の言葉には少し懸念が混じっている様に聞こえた。

それを察したのか、星峰はこう返答するものの、その最後の部分は何処か尻すぼみな印象を受ける。

やはり、懸念を完全には拭い去れていないのだろう。

だが、それでも星峰の彼女達を信じるという決意は一同に伝わったのか


「分かった、その点については星峰に任せるよ、なら僕達がやるべき事は……」

「今は休む事でしょ、そうしないとまず体力が持たないわ」


天之御が話を次に進めようとすると星峰はその話に割って入り、そのまま休息を取るように促す。

その考えを察したのか空狐も


「そうですね……唯でさえ消耗の激しい魔王秘術を使った後なんですから、これ以上無理をしては体に差し障ります。

天之御殿下も今日の所はお休みになったほうが宜しいです」


と言葉を続ける。

それを聞いた天之御は


「……そうだね、そうさせてもらうよ。

君達もゆっくり休んで欲しい」


と告げてその場を解散させる。

そしてその足で自分の部屋に戻るものの、戻った直後に天之御は


「……やっぱり、空狐と星峰に隠し事は出来ないか……」


と呟いた直後にそのまま床の上に倒れ込み、意識が飛ぶように深い眠りへと落ちていく。

一方、同じく自室に戻った星峰は


「今回の一軒……万が一ブントに知れ渡ったらとんでもない事になる……その前に手を討たなければ……

最悪の場合、私の正体を明かす必要があるかもしれないわね」


と一人覚悟を決め、腹を括った口調で呟くと専用の端末を起動し、そのまま何かの文章を打ち込んでいく。

そして文章を完成させ、送信キーを押すが、その顔は何時もと違い、いや、何時も以上に覚悟に満ち溢れていた。

それだけ今回の一軒を重く見ているということなのだろう。

他の面々もそれぞれ自室に戻り、これまでの作戦終了とは違う重く引き締まった顔つきで一夜を過ごしていた。

翌日、久し振りにキャベルの自室で一夜を過ごしていたコンスタリオの端末にはメッセージが届いていた。

勿論送り主はスターこと星峰である。

スターの名前を確認したコンスタリオは


「スターからのメッセージね……全く、此方の状況を知っているのなら顔くらい……え!?これって……」


と少々ぼやきながらメッセージを確認するが、その内容を見て顔色を変えるのに時間はかからなかった。

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