第888話 天之御の決意

「うん……自己修復機能を備えた兵器生産プラント、其の危険性はこれまでの兵器生産プラントを遥かに上回っているよ。

兵器だけならまだしも其の大本まで自己再生するとなると其の破壊には相当な労力がかかる」

「今回は魔王秘術のお蔭で何とかなったけど、この天之御の消耗具合を見る限り、いつまでもそれに頼り切る訳にはいかないわ」

「大丈夫だよ……今回は初めて使ったからこれだけ消耗したけど、これからは……」


涙名と星峰の懸念に対し天之御は大丈夫だと言葉では言う。

だが其の言葉の歯切れが何時もより明らかに悪い事が天之御自身の内面にも不安を抱えさせている事を暗示していた。

そしてそれは天之御本人の意志を問わず其の場に居た全員に必然的に伝わる。


「とにかく、あんな生産ラインがもし他にも存在していたら大変な脅威になるわ。

そして、もしブントが其の技術を既に手にしている……いえ、今回の場合は其の存在を承知しているだけでも既に驚異と成り得る。

既存の技術を既に組み合わせるだけでそれが生まれ得るのだから」


星峰の言葉に一同は一段と警戒心を強める、星峰の言う呼びかけの内容には一切の間違いが無いからである。


「となると、次にやるべきは施設の中から手に入れる事が出来た建設候補地の調査だね。

もし其処に実際に生産施設が建設されていれば今回の生産ラインと同様の驚異が存在している可能性は十二分に考えられるからね」


涙名がそう告げると天之御も


「僕も同じ意見だよ、だけど問題は其の調査対象の殆どがブント側の勢力の近くにあった、或いは今もあることが一番だ」


と言葉を続ける。


「既にブントが内部にちょっかいを出しているかも知れないということですね……」

「ええ、ブントが生産ラインに自己修復機能を採用していないところを見ると、其処まではまだ調査が進んでいないのか、それとも現状の技術では導入不可能なものなのか……何れにしても厄介な話には変わりないわね」


岬と星峰がこう続けると天之御は


「だとしたら尚の事時間を掛けている訳にはいかない、各地の部隊に協力を要請して調査を少しでもして貰う必要がある」


と顔を強く引き攣らせる。

恐らくはこのまま放置をしておく訳にはいかないという決意の現れなのだろう。


「ええ、だとしたら直接的ではないにしても彼女達にも伝えておくべきでしょうね。

それは私の方で処理をしておくわ」


天之御の決意を受け取ったのか、星峰もこう言葉を続けて顔を引き締める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る