第887話 魔王秘術の謎
「そして、そんな中で私はある資料を発見したの、それが魔王秘術に関する資料、それも其の秘術について、かなり詳細に記載されていたわ」
自嘲気味に聞こえた空狐の発言は一転して真剣なものになる。
それだけこの話が真剣に向き合わなければならないものであるという事なのだろう。
他の一同の顔も引き締まった物になる。
「その資料、ここで表示する事は出来ないの?」
「ごめんなさい……資料を持ち出したり複製しようとすると自動的に消去するプログラムが仕込まれていたの。
それ自体は気付く事が出来たけど、どうやって解除すればいいのかが分からなくて……」
そう告げる空狐の顔は申し訳無さとともに不甲斐なさを感じさせるものであった。
いや、実際そうなのだろう、其の顔は明らかに悔恨を感じさせる。
「それは分かったわ、今度私を其処に案内してくれれば何とか出来るかも知れない」
「ええ、其の時はお願いするわね」
其の顔を見て思う所があるのか、星峰が助け舟を出す。
それに乗る事を決めたのか、空狐はすんなりと其の提案を了承する。
「それは分かったけどよ、空狐の一族がどうして魔王秘術の事について知る事が出来たんだ?俺達だって殿下に近い一族だけどそんな話聞いたことねえぜ」
八咫がこう話すと天之御は
「恐らく空狐の一族が歴代魔王に対して特に近い立ち位置にいた事と無関係ではないんだろうね。
隠す必要もない位の密接な関係を保っていたのか、それとも何処かで魔王が口を滑らせたのか……其のあたりは空狐の資料から調べて行くしかなさそうだね」
魔王としての立場から考えている為か、天之御は空狐の立場も考慮した上での発言を行う。
だが其の顔は単なる即金に対して向ける顔ではない、やはり彼等の関係性は主従ではないのだろう。
其の事情を知っている星峰の顔も複雑なものとなる。
「つまり、その資料を調べれば魔王秘術についてもより深く調べられるかも知れないという事ですか?」
「そういう事になるよ。
僕自身、魔王秘術についてはまだまだ分かっていない部分が多分にある。
だから今回使ったのもある意味では賭けに近かったんだ」
岬の質問に対し、天之御は今回の行動が賭けである事を告げる。
それは単なる告白ではなく、今回の一件がそれ程までに切羽詰ったものであった事も暗示していた。
「それを使わなければならない程の危険な物が改定に沈んでいた、その事実も又恐ろしいものがあるわね」
星峰のその発言は今回の一件の問題点を総括していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます