第876話 作り出す者

「つっ!!流石にもうその手にはやられないよ!!」


涙名派そう言うと上手く体を捩って剣を躱し、そのまま扉に接近して其の爪を突き立てる。

そのまま扉は奥へと倒れ込み、其の奥にも又しても部屋が広がっていた。

但し、今度の部屋はこれまでとは明らかに違う異質な雰囲気があった。

その光景は自然でもなければ兵器開発プラントでもない、だが、考えられる線は一つだけあった。


「この部屋は一体……部屋の中心に柱があるだけのように見えるけど……」


涙名がそう呟くと星峰は


「ええ、一見するとそう見えるわね、でも……」


と言い、其の柱に近付いていく。

一見すると罠の様にも見えるが其の柱から武器が生えてくる様な事は無かった。

そのかわりなのか、其の柱には扉が見える。

其の扉の蕎麦にはスイッチが有り、それが何を意味しているのか、一同には容易に想像がついた。


「このスイッチ……矢印が書かれている事から考えても……」

「ああ、恐らくはその線で間違いないだろうな」


空狐と八咫がそう言いながらスイッチを操作すると、其の予想通り柱の中心の扉が開き、其の中からエレベーターらしき空間が姿を表す。


「やはりエレベーターだったんだね……そして其の行く先は……」


天之御がそう言いながらエレベーターに乗り込むと其のエレベーターは行き先が一箇所しか無いのか勝手に動き出し、上へと一同を運んでいく。

そしてエレベーターが止まり、開いた扉の先に広がっていたのはこれまでとは明らかに違う上質な通路、そして其の奥にある扉と左右に幾つか付いているそれよりは小さな扉であった。


「これまでとは明らかに雰囲気が違う通路ですね……罠は仕掛けられていないようですがそれが却って不気味です」


岬がそう呟きながら通路の扉を横切ると確かに岬の言う通り、其の扉から武器が生えてくる様な事は無かった。


「この奥には一体何があるのでしょうか?」


そう言いながら岬は扉の取手に手をやり、取っ手を回して其の中に入っていく。

すると其処には個室が広がっていた。

個室と言っても下手な宿舎よりは余程広く、工夫次第では何人もここで生活出来そうな雰囲気である。

更に生活用品も揃っており、明らかにそこで生活していた生命がいるのは明白であった。


「この生活用品に生活必需品……やはりここは生命用の個室なんでしょうね。

それもこんな上質な部屋を与えられているとなると……」

「只の人造生命とは思えないね、恐らくは幹部クラスか、或いは人造生命を作り出す側の生命」


星峰と天之御のその仮説は其の場を納得させるのに一番の結論であった。

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