第877話 異質なる個室

其の部屋の中は綺麗に整頓され、且つ、其処にある生活用品はこれまで見てきた物よりも明らかに高価な印象を受ける物であった。

最も、これまでの遺跡と一式に括る事が出来ない以上単純に其の点だけでこの遺跡が、更に言えばこの部屋が特別であると言い切る事は出来ない。

だが其の点を差し引いて考えてもこの部屋から受ける印象は他の部屋とは異なっていた。

それ程この部屋は異質だったのだ。

これまでの宿舎の様な複数人が寝泊まりする部屋とは明らかに異なる個室であり、高価な生活用品が揃い、更に部屋の中に専用の端末まで用意されている。

其の端末を星峰が起動しようとするが画面にはパスワードの入力画面が表示され、それ以上調べる事が出来ない。


「駄目ね、ここから何かを探れないかと思ったけどきっちりパスワードでロックされているわ。

となると、無理やり鍵をこじ開けようとすれば何が起こるか……」


星峰の其の言葉にはこれ以上の無理な追求は避けるべきだという意味が暗に示されていた。

だが其の意図は暗に示すまでもなく、其の場に居た全員が察していた。

いや、正確に言えば同じ意見だったというべきだろう。


「分かってる、これ以上の無理な追求は僕達の首を逆に締めかねない」


天之御がそう告げると一同は其の部屋を後にし、違う部屋へと入る。

其の部屋も又内装が綺麗に整えられ、明らかに幹部が居たであろう雰囲気を醸し出し

ていた。

最も、其の部屋は先程の部屋に比べれば散らかっていたが、それも個人差で説明出来るレベルである。

其の証拠というべきか、其の部屋にも端末はあったが其の端末のパスワードロックが忘れ去られているというような事は無かった。


「この部屋も生命のいた痕跡があるね……そしてきっちり端末にはロックが掛けられてる。

流石に鍵をかけずに外出するような迂闊な真似はしないって事ね……」


少し皮肉った様な言い方で星峰はそう零す。

一方、天之御は部屋の中を見渡すと


「だけど、その生命は本当に仕事熱心だったみたいだね、何しろ本棚の中に関連するであろう書籍や資料で溢れてる」


と告げる。

天之御の言う通り、その部屋の本棚の中は関連するであろう書籍や資料で溢れて履いた。

だが一同の中の何かがそれに触れてはならない様な、そんな予感を感じさせていた。


「とにかく、ここも危険な予感がします……あまり深く追求しないほうが準備が出来ていない今はいいかもしれません」


空狐がそう告げると同時に一同は部屋から出て次の部屋へと向かう。

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