第864話 重なり合う歴史
「此の文章が書かれてからこれまで私達が調査してきた各地の先史遺産が建造されたようね。
ご丁寧に残されている建設候補地の地理と私達がこれまでに把握している先史遺産の地図を照合してみたら……」
星峰はそこまで言うと実際に二つのデータを重ね合わせる、するとその二つの内、先史遺産が記載された天之御がこれまで記載したデータが候補地とずれている場所は只の一つもなかった。
一方、候補地の記録の中にはこれまでに調査した先史遺産の箇所から外れている物も確認出来る。
「星峰の言う通り、候補地は全て僕達が記録しているデータと重なるね、けど、候補地のデータの中には僕達が未だ調査していない箇所もある。
となるとそこには……」
「何らかの事情で建設を断念したケースを除いて先史遺産があると考えてまず間違いないわね。
そこが兵器の施設なのか、それとも兵士の施設なのかまでは此のデータには記載されていないけど」
天之御と星峰の言葉を待つまでもなく、まだ記録がない候補地に施設があるのは用意に想像がついた。
その仮説が直ぐに信憑性を帯びる程此のデータとの一致は偶然では無いと思えたのだ。
「しかし、未だ調査していない箇所に絞ってもかなりの数がありますね……ちょっと待って下さい。
星峰、この地図に更に現在の人族と魔神族、そしてブント側か否かの記録を重ねる事は出来ない?」
「可能よ、直ぐに実施してみるわね」
地図を眺めながら涙名がふとそう発言し、それを聞いた星峰は直ぐ様涙名の提案を実行する。
すると地図上にそのデータが重なり、現在の勢力図と先史遺産の箇所が絞り込まれていく。
それを見た岬が
「え……これって……一寸……」
岬が困惑した声を上げるのも無理はなかった、残っているエリアはその大半がブント側の精力の近くにあったのである。
最も、西大陸だけは例外であったが。
「調査していない地域は殆どがブント側の近く……か、これじゃ調査が出来ていない筈だ」
その結果を見た天之御は何処か落胆した様子を見せる。
「星峰……更に手間をかけさせて申し訳ないんだけど、此の構図に更に現在の戦争の開戦当初、つまり星峰が星峰となる以前の構図を重ねてくれない?」
「分かったわ、直ぐに実施する」
涙名の更なる要望にも直ぐ様応える星峰、それは意図が分かっているが故なのか、それとも以心伝心の関係故なのだろうか。
そんな二人のやり取りを見て天之御は
「此の二人の息はやっぱりぴったりだね、何だか少し嫉妬しそう……いや、嫉妬というより羨望かな」
と内心複雑な気持ちを抱く。
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