第863話 数珠繋ぎの悪意

「この施設から人造生命や兵器が生み出され始めたって言うのか……だったらあの忌まわしい俺の街の地下も……」

「ええ、その可能性は十分考えられるわね、そして、もしそれが事実であるならば……」


八咫と星峰が続けてこう言葉を交わす。

その内心では八咫の忌まわしい過去に関する記憶が蘇っていたのは想像に難くない。


「各地の先史遺産の遺跡がここから生み出されたのであれば、そこから入手した技術でブントが作り出した施設も必然的にここから生み出されたという話になるね。

そう考えれば八咫にとってこの施設というのは忌まわしさの象徴なのかもしれない……」


涙名がそう低い声で呟くが、それでもこの状況ではどんな小さな声でも八咫の耳に入る。

涙名の心配はどうしても的中してしまうのである。


「そんなに低い声にならなくても大丈夫だ、涙名。

俺は此の程度で折れたりはしねえ」


八咫は口ではそういうものの、その口調は何処か虚勢を張っているようにも思えて仕方がない。

その内心の危うさを察したのか天之御は


「星峰、他の記録についても何か分かった事はある?」


と星峰にそれとなく違う話をする様に持ちかける。

すると星峰もその空気を感じ取ったのか


「ええ、他にも幾つかのデータが記録されているわ。

そしてそのデータを検証していくと、私達が先程から勘付いている様に各地の先史遺産の遺跡が此の遺跡のデータを元に専門的に分割された物であるという仮説が確信に変わっていくわ」


と返答し、先程から何度も繰り返されていた自分達の仮説が当たって居る事を説明する。


「私達の仮説が当たっていた?それを証明するデータが有るの?」

「ええ、ここを見て」


岬が星峰に尋ねると星峰はこう返答し、その根拠となる部分のデータを見せる。

するとそこにはこう書かれていた。


「この施設に置いて、我々は戦争に勝利する為の多大な準備を整える事が出来た。

しかしやはり一箇所で全ての準備を整えるのには無理が生じ始めている。

そこで各地にこの施設で得られたデータを元により特化した形にした施設を建造する事が先程正式に決定された。

これによりこの施設の実験はさらなる高みを目指す事に向ける事が出来る」


その画面に表示されている文章を星峰が読み上げる。

その内容は先程まで天之御達が仮説として考えていた内容そのままであった。

但し、その後施設がさらなる高みと称してよりあくどい事に手を染めていたという部分までは予測出来ていなかったが。

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