第865話 太古よりの魔
「天之御?どうかしたの?」
そんな天之御の様子に気付いたのか、星峰が手元を止めてふと問いかける。
「いや、何でもないよ」
天之御はそう返答するものの、その様子は何か隠しているのはバレバレとしか言い様のない返答であった。
だがそれを聞いた星峰は
「そう、ならいいんだけど」
と目線をモニターに戻して作業を続行する。
一方涙名はその様子を見て天之御が何かを考えているのに気付いているといったふうな表情を見せていたものの、その先に踏み込む事はしなかった。
「二人には明らかに気付かれたね……これじゃ魔王の名折れだ……」
天之御は内心で思わず表情に出してしまった自分の行為を恥じる。
無論、周囲の面々がそんな事には気付く筈もないが。
「出たわよ、開戦当初の勢力図、現在の勢力図、施設建設候補地、これらを重ね合わせた結果はこうよ」
星峰がそう告げると全員の視線は一気にモニターに集中する、それを見た八咫が
「おい、これって……」
と思わず絶句すると空狐は
「ええ、この勢力図を見る限り、開戦当初から現在調査に至るまで出来ていない部分は殆ど、いえ、全てブント側の勢力下にあるわね、ただ、西大陸については先日の一見で瓦解した事により一気に調査可能になってはいるけど」
と言葉を続ける。
そしてこの構図を出して欲しいと言い出した涙名は
「やっぱり、思った通りだ。
まあ、この位は当初から検討はつくけど、それ以上に気になるのは……」
「ブントがどうしてここまでスムーズに先史遺産の候補地の近くに街を構える事が出来たのか……ね」
自身の中に立てていた予測が的中した事を告げ、それに星峰も言葉を続ける。
「ここまで都合よく構えているとなると、その場所を狙って制圧したというよりも寧ろ初めから存在している事が分かっていてその為に街を建設した、そう考えた方が良さそうだね。
最も、先史遺産の遺跡自体の数が多すぎた事もあってか全ての箇所を抑えるまでには至っていないようだけど」
天之御がこう発言すると星峰は
「ええ、そしてこの仮説が的中しているとしたら、間違いなくブント側にいる事になるわね。
先史遺産の情報を掴んでいる奴が」
と強い口調で続ける。
「うん、それも街の建設の時点で関与していたというのであれば、かなり昔からブントに参加していた可能性が高い。
最も、それ故に現在も存命なのかどうかは分からないけどね」
天之御がそう告げるとその場にいた全員は首を縦に振って頷き、その考えに同意しているという素振りを見せる。
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