第850話 目に見えない悪意

「だけど、此処で時間を掛ける訳には行かないよ!!魔王妖術……漆黒の冥府」


天之御はそう叫ぶと兵器の下に黒い妖術の穴を出現させ、その穴を広げて兵器をその下に落としていく。


「え!?そんな事したら……」

「大丈夫、行き先は例の研究施設だから、それに其処に行くまでにあの兵器は圧壊してる」


いきなり兵器を消滅させた事に対して動揺した声を上げる星峰、だが天之御はそんな星峰の意図を掴んでいると言わんばかりにすかさず反論し、その反論に星峰も納得した表情を浮かべる。

その直後、人族と魔神族の混成部隊が少し蹌踉めきながらも立ち上がる。

その足取りは覚束ないとまでは行かないものの、明らかに疲労が感じられる決して明快とは言えない足取りであった。


「天之御殿下……一体何故こんな所に?」


部隊の指揮官らしき人族がそう訪ねてくると天之御は


「何故って……君達の事を聞いたからだよ、もしかしたら何かとんでもない事が起きたかもしれないって司令官からね」


と返答し、それを聞いた指揮官は


「そうですか……まあ、まだとんでもないとまでは行っていないのですが……」


と少し疲労感を感じさせる口調で話す。


「一体何があったの?連絡もつかないって司令官が心配してたよ」

「はい……実はこの先の調査にあたっていた際、その奥から急に今の兵器が出現し、我々を襲撃してきました」


涙名が何が合ったのか問いかけると指揮官はこう話す。


「襲撃してきたって、だったら基地内の……」

「いえ、レーダーに映らなくする機能を搭載している可能性は十二分に有り得るわ、さっき司令官が送ってくれたデータの中にブントがその技術を手にしている記述は既に確認出来ている、その入手元である先史遺産の兵器に搭載されている可能性も高いわ。

それに以前交戦した擬態兵器の件もあるからね」


岬が内心に抱いた疑問は星峰の解説で解決され、そのまま指揮官の話は続く。


「更にその事を伝えようとしても通信機も繋がらず、何とか兵器を食い止めつつ交代していたのですが、あの兵器の数が次から次へと増えていき、此処を水際としていたのです。

幸い此処まで侵攻してくる兵器は多くありませんでしたが……」


指揮官の話を此処まで聞いた一同は顎に手を当てて何かを考え出す。


「あの兵器の目的はあくまで侵入者の迎撃であり、あまり深追いはしない様にプログラムされているのかもしれないわね。

只、もし仮にそうだとすると此の奥には今のと同じ様な兵器が犇めき合っているって事になる」

「だとしたら放置は出来ないね!!」


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