第834話 防衛部隊崩壊

そこに一報を告げると思われる通信が入ってくる。

司令官が自信なさげに通信機を手にするが、その姿は傍から見ているともうそれだけで嫌な予感しかしない雰囲気を出していた。

通信機を耳に当てた司令官が


「……キャベルの司令官殿!?」


とその相手に驚くとコンスタリオ小隊やアンナースも同様の驚き、そして不安が混ざった表情を浮かべる。

此のタイミングでキャベルから通信が来るということ自体、良い予感はしないからだ。


「……分かりました、ではその様に致します……」


暫く通信で話を聞いた後、通信機を置いた司令官の顔は明らかに自信は疎か、最早顔を上げる気力すらも無くしている表情であった。


「……どんな伝達があったんですか……」


シレットが司令官に恐る恐る伝える、すると司令官は


「現時刻を持って人族部隊は西大陸を放棄、此処を含む防衛部隊をキャベルまで後退させよという指示が発令されました。

それも現在キャベルに居る人族総司令官の指示によって伝達されたということです」


と告げる。


「総司令官がそこまでの指示を……それだけ事態が深刻って事なのね……」

「ええ、もしこれに従わぬのであれば事と次第によっては反逆者とみなし、今後は敵対行動を持って対応する事になると。

他のタウンにも既に連絡が行き渡っており、此処だけが拒否する事は許されないと念を押されました」


コンスタリオがそう司令に話すとそれを裏付けるかの様に目の前のモニターに人族が移動を開始している光景が映し出される。

それはまさしく、今伝えられた事が真実である事を指し示している事に他ならなかった。


「私達も移動を開始しましょう……」


失意とも言える表情で辛うじて命令として総口に出すものの、その声に力はなく司令官の無念さはその場に居た全員が空気と肌で感じ取っていた。


「……分かったわ、そうしましょう、兵士には私から放送を入れる」


アンナースはそう言うと基地の放送機器の電源を入れ、今司令官が言った事をそのまま復唱する様に放送する。

それを聞いた直後から兵士達は出撃エリアに集まり、その場にあった戦場移動車や兵器を持ち出して移動を開始する。


「では、貴方方も……」


司令官はそう言うとコンスタリオ小隊にも行く様に促すがコンスタリオは


「いえ、私達は後詰めに回ります、司令官とアンナースこそ先に行って下さい」


と言い、司令官とアンナースを先に行かせようとする。


「いえ、しかし……」

「大丈夫です、私達には飛空艇がありますから」


困惑する司令に対しコンスタリオは後押しをする。

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